憲法をめぐる主な動き

【翻訳資料】第2次アーミテージ報告
「米日同盟 2020年に向けアジアを正しく方向付ける」(2007年2月16日)

2007年2月28日

目次
はじめに
2020年にいたるアジア
 中国
 インド 
 朝鮮半島 
 韓国との違いへの対応
 東南アジア
 オーストラリア
 ロシア
 台湾
 地域統合
米国と日本:範を示し導く
米国と日本:同盟を正しく方向付ける
 経済
 安全保障
米国に求められるのは何か
勧告:2020年に向けた課題
 日本への勧告
 米日同盟への勧告
 地域政策への勧告
 地球規模の政策への勧告
結論
付属文書:安全保障と軍事協力

はじめに (リチャード・アーミテージ、ジョセフ・ナイ)

 世界規模の不確実性と移行の時代において、米国の揺るぎない利益のために求められるのは、これからの挑戦と現れつつある世界秩序をベストの形に仕上げる潜在的なチャンスを把握するための地平の先を見る明敏な認識だ。アジアは、世界人口の半分、世界経済の3分の1の力を擁し、国際システムにおいて経済、金融、技術、政治的な重要さを増しており、米国の利益をもっとも増進する安定し繁栄した世界秩序のカギを握っている。本報告の目的は、「自由にもっとも有利な力の均衡」(2002年米国家安全保障戦略から)を達成するための最上の展望を提供する構想を示すことである。
 この点で、アジアを正しく方向付けるとは、米国の価値をこの地域で押し付けることを意味しない。そうではなくむしろ、地域の指導者たちが自らの国の成功を米国の政治的、経済的目標と一致するように定義するような環境を整えることである。それは、市場原理、自由で開かれた貿易、知的所有権の保護、労働基本権、環境を基礎とした経済的繁栄である。それは、いまこの地域が享受している経済的成功を強める自由な諸制度をともなう、より大きな政治的自由である。それは、軍事分野での透明性とともに、国の強みを人道的救済と復興の分野における共通の利益により振り向けることである。それは、主要な大国が鳥インフルエンザやテロといった国境を越えた脅威に焦点を当てた協力をおこなうような地域である。それは、ビルマのような問題国家から生起する内外の問題に、指導者たちが「内部問題不干渉」という時代遅れの考えに基づいて目をつぶるのではなく、対応することを選択するような地域である。それは、ナショナリズムと愛国心が、より大きな共通利益である地域問題の解決のための努力に導かれるような地域である。それは、重商主義的、地政学的競争に従事するのではなく、天然資源を産出し、分かち合う共同の努力である。
 この構想を実現するための核心は、米国、日本、中国、ロシア、インド、欧州という主勢力の間の協力的関係であろう。それは、9・11後の世界における挑戦に対処し、平和で繁栄した未来を形成するために決定的に重要となるだろう。死をもたらす破壊的イスラム過激派との対決がより切迫したものになる一方で、主要国間の協力を確保するという長期的な要請は、持続的で効果的な米国の外交政策のための組織化原理となるべきである。米国の未来は、2020年の新たなアジアとの強固でダイナミックな関係を求めており、その要石は引き続き米日同盟である。
 冷戦後における両国関係の漂流を懸念した超党派グループは2000年10月、リチャード・アーミテージとジョセフ・ナイを議長に、報告「米国と日本:成熟したパートナーシップに向けて」を発表した。その報告は、クリントン政権時に始まり今に続く10年間の米国の対日政策を特徴づけてきたのと同じ超党派の精神で練り上げられ発表された。政治、安全保障、沖縄、諜報活動、経済の各分野における協力強化の具体的措置を勧告したが、それはブッシュ政権の対日政策の青写真となった。
 11カ月後に米国がアルカイダの攻撃を受けたとき、ジョージ・W・ブッシュ大統領と小泉純一郎首相は、かつてない個人的および戦略的なパートナーシップを築き、それは「不朽の自由作戦〔アフガニスタン攻撃〕」、イラクの解放と再建、北朝鮮の核危機への対応、台湾・中国間の新たな緊張の現れ、2004年12月の津波への大掛かりな対応といった大激動の中で試された。同様に重要なのは、新たに強化された戦略的関係が、太平洋の両岸で広く超党派の支持を受けたことである。
 この同盟は、過去数年の試練を乗り越えてより強くなっている。しかし、新たな地球的および地域的挑戦の波が引き続き高まっている。地球規模での主要な挑戦には、テロ、多くのイスラム世界における近代化課題への引き続く対応不足、大量破壊兵器の拡散、環境を保護しながらエネルギー需要の増大にこたえることなどが含まれる。アジアは今日、中国とインドという二大国のかつてなかった同時台頭、日本の再覚醒、歴史的遺産の問題(台湾と朝鮮半島)、競合するナショナリズムによって特徴づけられる。こうした挑戦の下で、米国の利益に沿った地域の構造をつくることは、米国の政策立案者たちにこれまで以上の関心と注意を求めるだろう。
 しかし、同盟の基礎は、これから数十年の間に起こるであろう一連の重要な挑戦に対処する十分な強さを持っているだろうか?
 3世代にわたり米国のこの二国間同盟ネットワークは、東アジアの事実上の安全保障機構として日本と米国、そして地域の大半に恩恵をもたらしてきた。続く世代にこれと同じ成功を保証するために、本報告は、2020年までのアジアの展望と、アジアの未来に肯定的影響を与えるため米日がいま協力できる諸手段を検討する。

2020年にいたるアジア

中国
 中国では奥深い変化が展開中であり、それは中国が支配的な地域大国に躍り出る可能性を示している。中断する可能性をはらみつつ、中国は地域の成長と地球的な活力の原動力であり続けるだろう。成長する中国の総合的な国力はすでに、国境付近で戦略的な環境を形成することを目的とした攻勢的な外交に反映されている。米国、日本および全アジアにとって主要な問題は、中国がその新たに見出した能力と資源を、経済および軍事大国として成熟していく中で、どう使っていくかということである。
 2000年10月のわれわれの報告が出て以降、おそらく太平洋地域のもっとも重要な出来事は、中国の爆発的経済成長であった。中国のGDPに占める貿易の割合は、過去10年間にほぼ倍加し、同国を米国、アジアをはじめとする市場と、オーストラリア、北米、そしてこれまで以上に中東からの天然資源という外部にいっそう依存させるようになった。中国の経済的成功はすべてにとっての機会を提示しているが、その一方で、アジアの隣人である東南アジア諸国連合の諸国に行くかもしれなかった資本と雇用をさらっていくなどの代償も現れている。
 中国は成長するだろうが、その成長は複雑要因なしの直線的「隆盛」とは必ずしもならないだろう。中国は高齢化社会、不十分な社会保障、巨大で拡大が続く発展格差、構造的腐敗などの巨大な国内的挑戦をかかえ、それらすべてが社会不安となっている。中国の指導部はまた、労働者の中で拡大する不穏、脆弱な銀行・金融システム、止まない民族対立、西側の人間にはほとんど想像できないような環境問題、伝染病への脆弱性に直面している。これらの挑戦が全体として、中国指導部の関心を国内に集中させ、したがって対外的な安定を重視させている。中国はその総合的国力を発展させることのできる安定した平和的な国際環境を求めている。中国は石油と天然ガスをはじめとした資源と外国投資へのアクセスのいかなる混乱も回避する必要があり、経済成長と公共の福祉の目的に無関係なものに資源をむける余裕はない。
 とはいえ、この地域の他のところと同様に、中国でもナショナリズムが強まっている。中国指導部の間では、特に経済成長が行き詰った場合、ナショナリズムは共産党への支持を集める便利な道具と見られているようだ。ナショナリズムへの依存は体制にリスクをもたらすものの、中国指導部は自らの正統性を支えるため愛国主義的な感情に頼り続けるだろう。これは、見通せる将来にわたり、米国と日本が中国に期待できる相互関係の質を制約するかもしれない。
 相互関係の質を制約するものには、価値観の相違もある。そのもっとも深刻なものは、人権、宗教の自由、政治制度をめぐる違いに関係している。価値観の違いは、「信頼性の不足」を呼び起こすため、もっとも重大なかたちで問題となるものだ。中国の場合、ますます多くの証拠が示しているのは、価値観と外交の結びつきが米国の利益に否定的影響を与えうるということだ。そのことは、中国のイラン、スーダン、ベネズエラ、ジンバブエ、ウズベキスタンといった諸国に対する態度で明らかだ。相手国の無責任な行動の継続を可能にするような関係の作り方を中国がおこなっているのは、明白である。
 中国外交の主要な特徴の一つは、中国国外にあるエネルギー資源への安全で信頼できるアクセスを確立するという要求である。巨大で増大するエネルギー不足と自由市場へのぬぐえない不信は、中国指導部の間で、拡大する外国へのエネルギー依存が脆弱性をつくりだすという認識を強めている。中国国内の需要を支えるために必要なエネルギーの確保、特にペルシャ湾岸の石油を将来の運輸需要にあてるのを期待して、中国は外国への株式投資とともに供給源の多角化の促進に乗り出した。米国、日本、またその他の国も、急増する中国のエネルギーと天然資源への需要によって、いっそう影響を受けるだろう。その結果のいくつかは、外国産原油の値上がり、環境悪化の進行、海事境界線をめぐる対立など、否定的なものとなりそうだ。しかし、同時にエネルギー効率や「クリーン石炭技術」、原子力にかんして協力をおこなう新たな機会ともなるだろう。また、中国の外部世界への依存増大は、米国とその友好国に外交的チャンスを与えることになるかもしれない。
 中国の華々しい経済成長は、軍事への大きな投資を可能にした。中国の集中的な軍近代化努力は、台湾との起こりうる紛争への準備に焦点があてられ、その努力は報われつつある。中国は周辺でハイテク戦争をおこなう能力を高めつつある。例えば、中国は、兵器取得、訓練、兵站、ドクトリン・戦略など軍事の不可欠な各分野の間にみごとな調整をすすめてきた。歴史的に言って、そうした調整こそ軍の即応能力を向上させる法則であることが証明されている。中国はまた、真の統合軍事作戦を遂行する能力までは至ってないものの、各〔陸海空など〕軍間の障壁を部分的に除去し始めている。中国は軍事能力の拡大を続けるなかで、外洋海軍の発展により重点を置くだろう。それは、エネルギー供給源とシーレーンを防衛する必要があるとの認識からきている。
 中国の近代化と成長は、その力と豊かさを保証するだろうが、その進む方向は不明なままである。2020年に中国は、より大きな政治的自由と自由な制度を持ち、経済開放性を支え自国民と近隣諸国により責任ある対応をする、責任あるステークホルダー〔利害共有者〕でありうる。一方で、中国の行動は、国際規範をゆがめ近隣諸国を脅かすような、不自由な制度を伴った重商主義、排外的ナショナリズム、腐敗により特徴付けられるかもしれない。中国はグローバルな舞台において、決定を求められるさまざまな場面に直面し続けるであろう。そうした場合に重要なのは、中国が平和的な統合と有益な競争の道をすすむような選択をする動機を持っていることである。

エネルギーの要素
 国家情報評議会(NIC)によると、2020年までの増大するエネルギー需要――とくに新興諸国の間での――は、地政学的関係に重要な影響を及ぼすだろう。NICの報告書『グローバルな未来を描く(Mapping the Global Future)』は、エネルギー需要を左右する最重要の要素は、世界的な経済成長、とりわけ中国とインドのそれであると主張している。
中国は、外国のエネルギー源への依存の増大にともなうリスクを軽減するために幅広い取り組みをおこなってきた。供給先の多様化や戦略備蓄を推し進め、外国に株式投資を獲得することをめざした取り組みがすすめられており、それが中国の対外政策や外交を具体的な形で動かしている。しかし2020年までの中国のエネルギー開発の地政学的特長の核心は、そのほとんどがペルシャ湾岸からの輸入石油への依存度の40%から90%への上昇であろう。
石油やパイプラインの株式所有によっても、中国の世界的な石油市場への依存は大幅には低下しないだろう。2020年までに中国企業は、最大日産120万バレルの石油株式を保有するかもしれないが、そのころには中国の一日あたりの石油輸入量はすくなくとも7〜800万バレルに達するだろう。にもかかわらず、現在の中国の市場に対する不信は、海外の資産を守るための軍事能力の追求へとつながっている。このように、中国の一部には、エネルギー安全保障を最終的に保障するものは、人民解放軍、また懸念国家との同盟だとの考えがあるかもしれない。中国の軍事現代化は、非常に大きな効果を発揮してきた。中国の軍指導者は、「外洋海軍(ブルーウォーター・ネイビー)」と関連する戦力投射能力を発展させることに重点を置いてきた。2020年までに、われわれは、中国がこれらの分野で顕著な前進を見せるものと予想できる。他方で、戦略的石油備蓄といった、供給中断に対する防護措置が優先されるべきである。
また中国は、海底探査にも投資しており、このことが外交政策に影響を及ぼす可能性がある。これまでの主要な取り組みは、中国の主権の及ぶ海域(中国が資金を出している最大のプロジェクトは渤海)でおこなわれてきたが、中国の意欲はもっとおおきいかもしれない。いくつかのケースでは、海底探査への大きな意欲が、アジアの安定を強めるかもしれない(中国とベトナムは、かつて係争地域だった場所での合同探査の協定を結んだ)が、同時に中国は他の係争領域にたいする主張を強める誘惑にかられるかもしれない。係争領域からの石油・ガスは、いずれも、中国の基本的なエネルギー状況を変えるほどの規模ではないとはいえ、中国船による日本領海への数度の侵犯があった後では、それが日本の多くの人々に不安を抱かせたことは理解できることである。2020年までに、これらの紛争を、軍に依存することなく解決するための強力なメカニズムが作られることが、われわれの希望である。
中国の石油消費の増大は、同国が主要な発電原料としてひきつづき石炭に依存していること(中国はいまも世界最大の石炭の生産国であり消費国である)とあいまって、中国を温室効果ガスの最大の排出国の一つとしている。中国(およびインド)が成長と近代化を進める中で、両国が、地球の気候変動にかんする国際的な議論で大きな役割を果たすことは不可欠である。  
アジアの状況では、エネルギーを、重大化しつつある問題として議論することが流行となってきた。貴重な資源をめぐる競争の激化や、中国のいくつかの行動は、表面的には「ゼロサム」的心理を示しているようだが、同時に、エネルギー安全保障は最終的には各国の関係を緊密化させる問題となるということもまた真実かもしれない。可能な協力の例としては、よりよいエネルギー・データベースの開発、戦略備蓄の調整、代替エネルギー源の合同研究、海上安全保障での協力などがある。
もし創造的に対応するなら、エネルギー安全保障の問題を組み替える機会が生まれるかもしれない。エネルギー需要の増大は、競争だけでなく、一連の共同の利益をつくりだす。米国、中国、日本、インドの間には、海事安全保障の改善にたいしてますます大きな共同の利益がある。不拡散や輸出管理についての見解の整合化も求められる。そしてこれら4カ国は、世界最大の石油生産地域であり続けている中東の安定促進にたいし鋭い関心を共有すべきである。エネルギー安全保障という名目のもとで、多くの内容を追求することができる。今後15年間にエネルギー安全保障を促進する積極的な取り組みに、中国やインドを巻き込んでいくことは、われわれの共通の目標であるべきである。

インド
 インドの大国としての興隆は、中国のそれと並ぶものであり、2020年まで、また2020年以降も、インドには巨大な潜在的成長能力がある。インドの成長率は現在、中国を下回るが、いくつかの要素は、2020年までにインドが中国を凌駕することを示唆している。インドの人口予測は、中国の労働力〔人口〕はその一人っ子政策の結果低下する一方、2020年を越えてその生産年齢人口が増大し続けることを示している。インドは政治的に、民主主義と開放の面で正しい選択を行なっており、それがより大きな国内的安定をもたらしている。さらに経済的に、インドは中国を上回る程度で、よく整備された法的・金融制度を確立している。インドはさらに、世界で一流の国際的ハイテク企業を持っており、世界市場における競争力を増強している。エネルギー安全保障に関して、インドの世界的なエネルギー需要への影響は、前述の中国の影響と非常に似通った道を進むだろう。
 しかし、インドの究極的な可能性は、その隣国の将来に影響されるかもしれない。パキスタンにおける「啓蒙的穏健性」への成功は、インドがその世界的な可能性に到達するのを助けるだろう。戦争の可能性やテロの脅威で疲弊することがなければ、インドは、世界水準の経済を築き、残っている社会的課題に専念し、長年のインド-パキスタン紛争に関連した複合的問題を超える関係を築く、より積極的な試みにその資源と外交努力を集中させることができる。しかし、パキスタンが過激主義に陥ることは、インドの可能性を切り詰め、より広範な米国と日本の利益を脅かすだろう。
 インドの経済と影響力の拡大につれて、インドの戦略的風土は引き続き変化する。インドがその従来の非同盟運動の方向を完全には変更せず、米国および日本との新たな関係の拡大を困難にすることはありえる。ワシントンと東京は双方ともに、インドとのそれぞれの戦略的関係を質的に改善した。しかしながら、両国は、インドは独自に中国と相乗作用の関係をもっていることに留意し、インドが日本や米国の対中均衡勢力の役割はしないだろうという予測に基づいてすすむべきである。ニューデリーは北京に関しては用心深く、中国との緊張を高めることに関心を抱いていない。それはそれとして、ニューデリーの「ルック・イースト政策」はとりわけアジアの関心を引いており、東アジアとの拡大する経済・政治・文化的関係は、インドを東アジア地域の戦略方程式の大きな部分とするだろう。とりわけ日本にとって、インドの民主主義的実践での成功は、共通の価値を基づく日本自身の外交の比重を大きくするだろう。

朝鮮半島
 統一朝鮮への不可避の移行は、北東アジアの戦略バランスをつくり変えるであろう。統一の過程が2020年までに成就にいたる可能性は高い。死活的な問題は、その統一がいかに起こるかである。再統一シナリオの一つは、北朝鮮の不安定さを伴うもので、それは北の大量破壊兵器の管理について困難な挑戦をもたらし、おそらく韓国に重い負担がかかるため韓国自身の民主主義制度と経済的繁栄を危機にさらすだろう。もちろん、われわれの計算は、北朝鮮が核兵器開発を2020年まで、またそれを超えて開発し続ける可能性を含んでいなければならない。北朝鮮の核問題は再統一の場合のみ、ウクライナの同じ問題がソ連の崩壊の後に解決したのと似たような形で、最終的に解決する、との可能性がますます高まっているように見える。米国と日本はそうしたすべてのシナリオに備えるべきで、いずれの場合も、外交と抑止において、これまでにない機敏さが求められる。
 われわれの実利的な評価では、1990年以来の北朝鮮政府の行動は、自らの政治、経済システムにとらわれたものであることを示している。北京とソウルからの支援と激励にもかかわらず、北朝鮮はためらいながら改革に手を出しただけで、「先軍」政治を継続し、核不拡散条約から脱退し、国際的安定を脅かす核とミサイル能力に自らの将来を賭けようとしている。
 北朝鮮は、きわめて親切な2人の韓国大統領とクリントン政権からの提案を拒否した。同国は見事な孤立と生命の維持を外国(特に中国と韓国)の親切に頼る道を選んだ。自国民の基礎的必要を満たすぐらいの経済も発展させられないでいる一方で、それでも同国はミサイルと核兵器をなんとか開発した。エリート層の贅沢のために同国は覚せい剤、偽100ドル紙幣、模造ブランド品を輸出している。同国は日本と韓国の市民を拉致し、何十年も秘密裏に拘束し、その行為を説明しなかった。
 金体制は、ケ小平式の開放政策でリスクを負うよりも、2100万国民の将来は暗かろうとこのまま何とかやっていく方を選ぶだろう、というのがわれわれの結論だ。したがって、しばしば喧伝される「大取引」はとらえどころのないままだ。なぜなら金正日は米国に根深い不信を抱いており、米国により提供される経済的誘因を「毒りんご」と見る傾向があるからだ。それでも、2005年9月19日の〔6カ国協議〕共同声明は、道理のある提案を盛り込んでいる。北朝鮮が6カ国協議合意を履行することはありえるが、これまでの同国の行動を考えるとひきつづき想像することは困難である。2006年の同国の核実験は、9・19共同声明を北朝鮮政府が履行する気があるのかどうか深刻な疑念を呼び起こす挑発的行動であった。しかしながら、6カ国協議プロセスが、北朝鮮の核兵器開発を封じ込める、あるいは凍結するだけにでも役立つなら、価値あるものとなることは、注目されるべきだ。6カ国協議そのものが革新的枠組みを導入したものであり、朝鮮半島において変化に対応し北東アジアの将来における安全を増進する重要なものであると証明されるかもしれない。

韓国との相違の処理
 現在の大韓民国(ROK)政府にとって、朝鮮半島の不安定さは北朝鮮の核兵器計画以上の脅威とみなされている。このことが、ソウルの脅威評価を、米国および日本ではなく中国の評価に(中国の増大する力についての韓国の戦略的関心にもかかわらず)そろえさせている。ソウルの評価は、改革志向の「386世代」の影響と韓国の民主主義の成熟を反映している。現在の指導者の多くが、米国に支持された韓国の独裁政権に対するたたかいのなかで最初の政治的経験を積んでいる。彼らは、朝鮮戦争を直接経験するには若すぎ、そのうちの多数はいまだ米国の動機への疑念を抱いている。ワシントンと東京にとっての難問は、北朝鮮の核危機についての交渉の結果の場合にも戦略的不意打ちや断絶の場合にも、すべての同盟国の利益を保護する調整のとれた対応をおこなうことを確実にするため、韓国との緊密な協力関係を維持することである。
 北朝鮮の核についての野心がもたらした脅威にいかに最善の対処をするかについて、米・日・韓の間にどのような短期的相違があろうとも、われわれ三国は共通の価値によって結束し、経済・安全保障上の利害を共有しているということを思い起こすことは、意味のあることである。米国と韓国は、共通の敵に対する血まみれのたたかいの中で作り上げられた同盟を共有しており、われわれは、直面する新たな挑戦に引き続き役立つことを確実にするためにわれわれの同盟を近代化してきた。将来の同盟において、韓国は主導的役割をはたし、米国は援助の役割をはたすだろう。戦力構造および指令機構はこの協力関係を反映するだろう。米軍は、再編成・統合され、数的には縮小されるが、その能力は、新たな技術の導入のおかげで、実際には拡大するだろう。
 両国の二国間経済関係の範囲は広大である。韓国は米国の7番目に大きい貿易相手国である。米企業は韓国経済に何十億ドルもの投資をおこなっており、韓国企業は、米国内で活動する全外国企業の4分の1を占めている。さらに、1年間に70万人をはるかに越える韓国人が米国を訪問し、約10万人の米国民がソウルに居住している。
 米韓自由貿易協定交渉が進んでいるのは、こうした状況の中においてである。これは、米国にとって、ずっと以前にカナダとおこなって以後、最大の二国間貿易交渉である。米国は、拡大する一方の自由貿易協定(FTA)のネットワークを持っており、その傾向はドーハ・ラウンドでの包括交渉の挫折によって強まっている。これらのFTAは、とりわけドーハ義務との整合性の確保が留意されている場合、関係各国のそれぞれの経済にとって極めて積極的な意味を持ちうる。われわれは、米韓協定もそうなるだろうと考える。
 しかし、この複雑な交渉は韓国内の支持の消滅とワシントンでのきわめて厳しい交渉計画に直面しているのが現実である。韓国の自動車産業と農業の利益は韓国政府に困難な条件を課し、韓国政府はFTAへの情熱を失っているように見える。ワシントンでは、ブッシュ政権も議会も、いかなるFTAにも北朝鮮国内の開城工業団地で操業する韓国企業が製造した商品を含むことに反対しており、これは、開城構想を強く支援する現在の韓国政府に対する厳しい非難となっている。さらに、米国経済に対する世界貿易の影響についての広範な懸念の増大のために、貿易協定への議会の支持は衰弱している。最後に、貿易協定を交渉し、協定への修正なしで議会の採決を求めることのできる大統領権限が2007年夏には期限切れとなるため、交渉は厳しい制限時間の下に置かれている。(この立法プロセスは貿易促進権限と呼ばれ、以前はファスト・トラック権限と呼ばれていた。)
 FTAをまとめ議会承認を得ることに失敗すること、ますますそうなりそうだが、は、FTA交渉が始まっていなかった場合より悪いかもしれない。それは、とりわけワシントンで引き続き大きくなっている保護貿易主義と重商主義の傾向を増大させるかもしれない。われわれは、それが広義の米韓同盟の価値の認識に影響するかもしれないことを懸念している。

東南アジア
 東南アジアは、引き続き、米国と日本にとってきわめて重要であろう。東南アジア諸国は、人口6億以上、国内総生産総計約8000億ドルであり、その両方の急速な成長が予測される。経済的重要性に加えて、東南アジアは、世界の貿易量の30%、世界のエネルギー輸送の50%以上が通過しているペルシャ湾およびインド洋から太平洋への航路にまたがって位置していることから、戦略的重要性をもっている。
 中国の大規模で増大する経済・政治的比重は、この地域の重要な要素である。過去20年におよぶ中国の急速な経済成長は、東南アジアの国々に新たな機会と挑戦をもたらした。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国と中国との貿易は昨年だけで30%増大した。ASEANのほとんどは、中国との間の拡大した貿易および投資機会から利益を得ている一方で、アジアにおいては、中国の経済的興隆が経済・政治・安全保障の状況をいかに変えるかに関して、注目すべき論議がすすんでいる。
 米国と日本は、民主主義と人権の前進でパートナーとなり、また経済成長の原動力である東南アジアの発展について、利益を共有している。日米両国は、さらに、テロリズム、拡散および感染症とのたたかいにおいて東南アジア諸国の全面的協力を必要としている。
 東南アジアにおいては、民主主義的制度は脆弱なままであり、「ジェマ・イスラミーヤ(JI)」のような民主的改革に反対する組織はその力を増している。今日、ASEAN加盟国の間での国対国の紛争の可能性は少なく、ASEANの統合がさらにすすむことで、2020年にはそれはさらに少ないものとなるだろう。しかしながら、「ASEAN方式」は、JIやビルマの軍事政権、あるいはラオスとカンボジアの弱体政権のような内部問題にたいする地域としての対応を阻むかもしれない。ASEANはいまだ、ビルマ、カンボジア、ラオスおよびベトナムをその中に包含したその拡張を確固としたものとしておらず、ASEAN諸国間の亀裂が拡大し、テロリストに利用される可能性もある。ASEANの挑戦には、真の経済・政治的統合を達成し、民主的改革を継続し、外部勢力との平衡を保つ外交的比重を発展させることが含まれる。
 ASEANの成功の鍵はその主要構成国の成功だろう。新たな民主主義インドネシアの成功は地域的にも世界的にも巨大な意味をもち、米国と日本にとって特別の関心となっている。シンガポールとわれわれの強大な安全保障および経済関係は、引き続き、米国の地域的および世界的な前方配備態勢にとって決定的に重要である。タイ、マレーシアおよびフィリピンと米国との関係は協力で多面的だが、民主主義の支柱――法の支配、自由なメディア、自由で公正な選挙――は、いずれも投資を必要としている。ベトナムがその潜在力を汲みつくし、ASEANの全面的な有効性にいっそう貢献するならば、すでに十分にすすんでいる経済改革に政治改革が政治改革を補足する必要があり、恐らく次の15年間にベトナムにとっての最大の機会が存在するだろう。ASEANはこれまで地域意識の覚醒の中心となり、現在は増殖する地域統合の全アジア的拡大の原動力である。

オーストラリア
 2001年9月11日の攻撃に対応して、ジョン・ハワード首相は米国を支持するためにANZUS条約を発動した。「不朽の自由作戦〔アフガニスタン〕」「イラク自由作戦」で米国を支援するとの同首相のその後の決定は、既に強力な同盟関係のさらなる強化に貢献した。
 しかしながら、この同盟の強さを維持するためには熟達した政治的運営が求められるだろう。この同盟内では、米国が地球規模の状況を重視する一方、オーストラリアは地域的利益と世界規模の利益とのバランスを保とうとしているという、将来展望の違いから主要な問題が生じている。オーストラリアは自国周辺で、東チモール、西パプア、パプアニューギニアおよびソロモン諸島を含む多くの安全保障問題に直面しており、それぞれがオーストラリアの限られた防衛資源に大きな要求をおこなっている。この同盟では、防衛戦力と防衛支出の規模の不均衡をめぐっても、問題が生じている。
 第一次世界大戦への参戦にまで立ち戻ると、オーストラリアの国家安全保障戦略は引き続き「連合」に焦点をあてている。オーストラリアの歴史、地理および国益が、オーストラリアを世界規模の利益を持った地域大国として定義する。その地域的利益を確保するために世界規模で行動しながら、オーストラリアは同時に、米国との関係を処理しつつ、地域各国と協力している。地域における指導的役割をオーストラリアが受け入れたことは、同国の戦略構想の根本的変化を特徴付けている。イラクの後、オーストラリアは地域の指導者としてアジア・太平洋地域に復帰するだろう。これは、米国が認識し尊敬すべき進化である。
 オーストラリアは、日本および米国と同様に、汎アジアではなく、引き続き環太平洋の方向にある。この補完性は、3カ国〔米、日、豪〕がアジア・太平洋地域全体の開放性を促進するための協力の機会を提供している。

ロシア
 ロシアは欧州により関心を集中しているが、地理、歴史、核兵器および国連安全保障理事会における地位からして、北東アジア方程式の一つの因数である。経済成長が最優先課題であるこの地域に対するロシアの経済的、政治・外交的関与の欠如は、ロシアが取るに足らない関係者であることを強く示している。しかしすべての上記理由から、ロシアは地域の均衡の一部であり、朝鮮についての6カ国協議へのロシアの参加が示すように、ロシアの選択は重要問題に影響を及ぼしている。さらに、世界最大の天然ガス埋蔵量を持つ世界第2の石油輸出国として、ロシアは地域のエネルギー安全保障に対する重要な貢献者でありうる。サハリンにおけるエネルギー開発と大きな論議となった原油およびガスのパイプラインは、北東アジアの将来のエネルギーに対するロシアの潜在的な重要性を浮き彫りにしている。
 ロシアの現在の国家主義・民族主義的政策は北東アジア・エネルギー市場へのロシアの予期される統合を制限しているが、地域の主要消費国――中国、日本、さらに韓国――は、供給源の多様化および地域へのロシアの経済的統合のため、ロシア・シベリアの原油とガスに注目している。人間の基本的自由といっそうの民主主義的発展への脅威を表面化させたロシアの統治実績に、この間、非常に懸念されるべき傾向がある。ある種の「権威主義的民主主義」に向うロシアの漂流は、ロシアが東アジアでいかなる種類の関係者になるのかという深刻な疑念を生み出し、ロシアが安定の強化と複雑化の両方の可能性をもっているということを示した。

台湾
 台湾およびその民主主義の成功は、米国と日本にとって重要である。台湾における民主主義の継続は、同じ考えを持つ友人として台湾との相互間および地域的協力の展望を強化し、それぞれの政治制度の自由化を志向するアジアの他の国々の手本として台湾を保護するという点で、台湾住民のためのよりよい統治と自由の最善の機会である。
 米国と日本は2005年2月、両国の「2プラス2」閣僚協議の声明で、「台湾海峡に関する問題の対話を通じた平和的解決を促す」という共通の戦略目標を発表した。この賢明な目標は、2020年まで、あるいは当事者がその政治的相違を解決できない限り、われわれの指針原則としての役割を果たすだろう。
 そのようなアプローチに組み込まれているのは、この問題の対話を通じた平和的解決の助けになる環境を築き維持する利益を、米国と日本が共有しているという認識である。この利益を促進するために、米国は、中国による軍事力の使用や威嚇を抑止し、同時に独立に向かう台湾の一方的な措置を思いとどまらせるという「二重抑制」の政策を採用した。米国にとって、これは、「一つの中国」政策を厳密に順守しつつ、台湾の正当な防衛要求の支援、力に抵抗する能力の維持、さらに相違を解決する手段として力に訴えるいかなる試みにも反対することを意味する。日本は、米国のこれらの義務を理解し、同盟国として台湾海峡をまたぐ平和と安定の維持に適切な方法で適応すべきである。米国と日本の両国にとって、これは、両側の肯定的・建設的な交流を促進し、挑発的主張や他の無用の政治画策を阻止し、断固として軍事的威嚇と脅迫に反対することを意味する。
 このアプローチにさらに組み込まれているのは、台湾住民は、平和な海峡間対話に資する環境の促進に最善のものは何かについて、米国および日本と同様の展望を支持するだろうという想定である。しかしながら、時間とともに、台湾が民主主義のプロセスを通じて異なる方向を選択すれば、米国と日本は、地域において共有するわれわれの利益をいかに追求するのが最善かを再評価する必要があるだろう。短期的には、台湾は自らの防衛を強化し、その民主主義と統治を改善し、直接交流の承認を含む中国との積極的関与の計画をすすめる展開する措置を取るべきである。そのような措置は、米国、日本および地域に正しい合図を送るだろう。

地域統合
 世界貿易機構(WTO)は、2020年のアジア域内貿易が1兆2000億ドルに達するだろうと予測する。米国は、地域の商品にとって引き続き重要な、しかし最大ではない、最終市場となるだろう。アジア域内貿易(全体の51%)は、すでに北米自由貿易協定(NAFTA)以上に結束性を持ち、傾向はこの方向で継続すると予想すべきあらゆる理由が存在する。しかし、太平洋横断域の貿易と投資も、より遅い速度でとはいえ、成長し続けてきた。アジア関連会議の増殖(ASEAN、ASEAN+3 閣僚会議、アジア債券ファンド、チェンマイ・イニシアチブ、アジア協力対話、さらに東アジア首脳会議)は、汎アジア規模の貿易・投資形態の急成長の論理的副産物である。これらの会議はまた、始まったばかりだが進化しつつあるアジアのアイデンティティについての感覚の広がりを示している。政策的な難題は、アジア域内と太平洋横断域の間の経済および制度的統合をめぐる適切な関係を見つけることである。
 アジア・太平洋経済協力会議(APEC)は、太平洋を横断する地域でグローバル規準に一致した地域経済制度である。しかしながら、APECはその初期の貿易自由化の活力を失っており、現在では東アジア首脳会議のような新たな会議との競争や急増する汎アジアFTAへの取り組みに直面している。地域の指導者が貿易と投資を歪曲するブロックを回避することは、米国の利益とアジア・太平洋の安定に決定的に重要だろう。2020年における前向きのシナリオは、APECを中心として、世界規模の制度に組み込まれている、お互いに強化しあう一連の制度の出現だろう。しかしながら、この地域の基本設計概念は、欧州連合や北米自由貿易協定(NAFTA)の発展を導いた戦略的展望のようなものなしに、発作的に表れている。
 中国は、他国の国内問題への「不干渉」と「低制約」の原理に基づいた多国間主義を受け入れている。中国の参加は歓迎されるが、国内問題は統合と協力の過程において重要問題となる。中国がその既存のWTO義務を完全に実行するためにあらゆる努力をすることは、中国自身および国際貿易システムの利益にとって、不可欠である。自由貿易協定は多角貿易自由化に追加のエネルギーを与えることができるが、自由貿易協定のすべてが等価値というわけではない。実質的にすべての分野を対象とせず、新たな開放への迅速な関与を生み出さない特恵貿易協定は、時間と資源を脇にそらすことであり、自由貿易に向かうアジアの動きを妨害することになるかもしれない。
 この地域の課題は、テーブルに向かっている人とまったく同じように重要である。米国は、民主主義、法の支配、また政権の国内行動の現代的規準を支える課題を促進する努力を、日本や同じ考えの諸国とともに強める必要があるだろう。
 もちろん、日中の競争関係、歴史的神経痛、異なる政治制度、さらに資源競争のような、アジアにおけるそのような統合への重大な障害が存在する。しかしながら、地域の構造は徐々に形をなしてきており、増殖する諸会議を通じて、その方向は2020年にはより明白になるだろう。われわれの利益への有害な影響を最小限にするためにこの雑然としたプロセスの結果を形作ることは、米国と日本が緊密に協議しなければならない挑戦課題である。

歴史
 北東アジアでは歴史はまだ終わっていない。実際、日本、中国、韓国の国内政治では、過去がいまも未解決の問題であり続けている。過去5年以上にわたって、歴史をめぐる議論の多くは、小泉純一郎首相による靖国神社参拝をめぐっておこなわれた。2004年以来、中国は、歴史問題の適切な取り扱いと日本の指導者による同神社参拝の中止を、高級レベルの交流の条件としてきた。しかし2006年10月、中日両国政府は靖国問題を棚上げし、小泉の後継者である安倍晋三首相が北京を訪問し、中国の胡錦濤主席と会談した。北京で、安倍と胡は、日中関係の歴史を研究する学者の合同委員会で合意した。同委員会は、12月末に東京で第一回会合を開いた。
 東京では、靖国神社の将来と1978年に祭られた戦争中の東条英機首相を含む14人のA級戦犯の将来をめぐって激しい政治的議論がおこなわれている。日本の世論調査では、問題の民主的な解決へ向けたコンセンサスが形成されつつあることを示唆している。このことは重要である。いかなる持続可能な結果も、日本国民の意思と支持を反映したものでなければならないからである。
 われわれは、日本が民主国家として、自らの過去に取り組み、近隣諸国と協力的な未来を形作る力を持っていると確信している。しかしその未来は、過去と客観的に向き合うという点で、双方向のものでなければならない。

米国と日本――範を示し導く

 米国がアジアにおける2020年の国際関係構造の発展を考えるにあたっては、避けるように努めるべきシナリオがある。とりわけ、アジアの主要諸国の勃興する力、影響力、ナショナリズム、そして資源要求からして、アジアにたいする米国の一極的な管理が持続不可能であることは明らかだし、その追求は、この地域における米国の役割を新しい現実に適応させていく上でむしろ逆効果となるだろう。
 この地域にとっては米国と中国による共同管理が将来の当然の構造だとみる見方もある。しかし、米国と中国が異なった価値体系をもち、お互いの利益にたいする明確な理解を地域的にも世界的にも欠いている間は、そうした歩み寄りは米中関係の将来性を過大評価することになる、というのがわれわれの見解である。中国との共同管理は、もしそれを受け入れるような場合、中国がもつ比重や米国にとっての価値――部分的には地域の戦略バランスを達成する鍵である――の増大を懸念する地域全体の友好諸国や同盟諸国との関係の質を危険にさらすことになるだろう。
 しかし同時に、米国と日本だけが中国と向き合うという二極構造は、競合する二極のどちらかを選択するよう地域の諸国に強いることになるので、無力だろう。米日の側に立つ国も若干あるかもしれないが、地域のほとんどの国は厳格な中立ないし中国との同盟を選ぶだろう。結局これは、アメリカや日本の民主主義がもつ力強い実例の力を弱めることになり、この地域を冷戦や19世紀の勢力均衡論に後戻りさせることになるだろう。それは、地域の安定にとって好ましいことではないし、中国の将来の肯定的変化にとっても役立たない。東アジアの安定は、今後も米日関係の質にかかっており、米国は日本と緊密に同盟しているとはいえ、ワシントンは3国全体の良好な関係を奨励すべきである。
 アジアにとってもっとも好ましい構造は、米国がこの地域にその力、関与、指導力を維持し続けながら、同時にアジアの他の成功している諸国が地域の諸問題に積極的に関与するというものである。日本、インド、オーストラリア、シンガポールその他が実例によって指導し、米国との連携(パートナーシップ)に依拠し、民主的価値を共有する、そういう開かれた構造が、自由市場、法の支配にもとづく持続的繁栄、政治的自由の増大を実現するもっとも効果的なやり方である。米国と日本はまた、アジアの通商生活への参加に関心を募らせているベトナム、価値を共有するニュージーランド、こうした諸国との関係構築も探求すべきである。こうしたとりくみをすべて、中国との協力分野を拡大するための諸措置と結びつけるとともに、意見が異なる分野については北京に率直にものをいうべきである。アジアにおいてこうしたやり方で活動することは、「アジアを正しく方向付ける」ことによって、中国を含むアジアのすべての国々の成長と方向に積極的に影響を及ぼす上で、重要だと考える。

米国と日本:同盟関係を正しく方向付ける

 「アジアを正しく方向付ける」という目標とともに、米日同盟がこの戦略のどこに位置するのかという問題がある。もしわれわれが米日同盟にあまりにも依存しすぎるならば、われわれと日本はアジアにおいて孤立するだろうという人もいる。彼らは、歴史問題をめぐっての日本と中国、日本と韓国間の当面の緊張を指摘し、われわれの長期戦を中国の方向に転換するよう主張している。われわれは、そのような構図が地域におけるもっとも重要な戦略的な財産――緊密な米日同盟を不必要に弱体化させるということを確信している。この同盟は、米国のアジア戦略の核心であり続けることができるし、そうあるべきである。この戦略の成功へのカギは、同盟自身が共通の脅威に基づいた排他的な同盟から、共通の利益と価値観に基づいたより開かれて包括的な同盟へと発展し続けることにある。
 2020年に確実なことが一つある。それは、米国と日本は、依然として、世界の中で、民主的制度と共通の価値観を持った2つの最も大きな経済国であり続けているということだ。だからこそ、米日同盟は過去と同様にアジアの将来を方向付け続けるであろうし、地球規模の〔勢力〕方程式のなかで決定的に重要な要因になり続けるだろう。
 今日の日本の役割を考えてもらいたい。日本は、国連、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、アジア開発銀行への2番目の援助資金供与国として、国際機関を支援している。世界の国々を対象にした2006年の世論調査では、日本は世界の中で(中国と韓国は例外だが)、もっとも尊敬を集めている国際公共財提供国となっている。日本は、自らの慎重な自衛能力、また米国のプレゼンスへの支持を通じて、アジアにおける力の均衡を支えている。日本は、2004年の津波のような場合、救援活動として5億ドルを超える資金援助と自衛隊の派遣をおこなった。日本は、経済発展、民主主義的原則、地球規模の協力の積極的なモデルとなっている。
国際システムへのこうした高いレベルの財政支援を維持する日本経済の能力は、2020年までに徐々に低下する見込みであるが、50年におよぶ消極姿勢の後に、日本の新しい指導者たちは、国際システムの中で日本の高い評価を維持する、より積極的な安全保障と外交の役割を主張している。米国は、確信を持ちその方向を約束する日本を、必要としている。米日同盟に背を向けたり、日本に対するわれわれの期待を低めたりすることは、地域の安定と地域における日本の役割に否定的な影響を与えるだろう。2020年の国際システムを支える日本の代わりに、日本は、せいぜい「中程度の力」に安住する国になるかもしれないし、御しがたく、厄介で、最悪の場合には国家主義的な国になるかもしれない。日本に対して、国際の安定と安全保障を支援する、より活動的な役割を担うことを奨励しないことは、国際社会の中で日本の全面的な潜在力を否定することである。しかし、もし米国の戦略が日本の国民感情と融合するような日本への高い期待を持ち続けるならば、日本は、この地域において、民主主義的な価値観の手段に基づいたリーダーシップとは何かについての強力なモデルとなるだろう。
 この点に関して、われわれは米日関係のカギとなる2つの要因――経済と安全保障――に焦点を当てる。そして、米日同盟に対してわれわれが持っている強い期待とアジアの将来に影響を与える同盟の能力を実現することを目的とした超党派の行動計画を提案する。

経済
 日本は、着実に持続的な経済回復の途上にあり、同国の構造的な経済課題の多くを克服しつつある。2001年4月の小泉首相とその顧問チームの誕生は、経済史における重要な方向転換となった。不良債権は、大部分、主要銀行のバランスシート(賃借対照表)から一掃された。かつて多額の借金と非生産的な資産を背負い込んでいた企業はバランスシートから削減し、今日では、1980年代初期以来でもっとも強力な金融状況にある。資産と消費者物価の両方におけるデフレーションは、大部分、棚上げされてきた。その最終的な結果は、日本の生産者と消費者は、その経済状況において今日、1991年にバブル経済が崩壊して以来のいかなる時期よりも自信にあふれているということになった。
 しかしながら、ここ数年のうちに手が打たれないならば、依然として3つの要因が国際的な経済大国としての日本の将来のうえに重くのしかかるだろう。
・第一は、国債残高である。日本の債務はGDP比で、着実に200%に近づきつつある。日本の堅実な経済パフォーマンスによって勢いづけられて、仮に金利がそのうち上昇するならば、この借金を財政的に管理することはますます難しくなるだろう。
・第二の要因は、人口統計である。日本の人口は、まぎれもなく減少している。65歳を超える人口の割合は2015年までに25%を超える予定であり、それには社会的支援コストの困難や労働人口の急速な縮小の負担が伴う。
・第三に、日本は生産性を高めるためにかなり大きな発展を遂げなければならない。日本の製造業は効率性のためのグローバル・スタンダードを設定し続けているが、彼らの強さはサービスと金融部門における低い生産性によって相殺されている。生産性を全体的に向上させるためには、業界に革新のための自由裁量をより多く与え、長期にわたって発展が遅れているサービス部門を拡大できるように、規制緩和を継続することが必要である。さらに、経済全体を通じて資産に対する利益を増やすことが不可欠である。水素自動車や燃料電池、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーといった新興分野――これらはすべて、2020年の経済における新しい成長部門になるだろう――への日本の実質的な投資はきわめて重要である。
 過去数十年にわたって、また将来の見通しでも、急発展する中国の経済力は多くの日本国民、米国民にとって厄介なものになるとみられている。中国の台頭を、中国の利益がわれわれの損失になるようなゼロサム・ゲームとして見る人もいる。しかし、より正確な見通しというのは、製造業の中心地点としての中国の台頭は、とりわけ米国と日本の企業にとってみれば、消費需要、投資資本、高技術の中心的な供給源として、中国を米国と日本にますます依存するようにさせるということである。アジア域内輸出の最終地としての中国の役割の高まりにもかかわらず、中国が他のアジア諸国から輸入するものの多くは、それが木材のような原材料であろうと回路基板のような半製品であろうと、米国、欧州、日本の消費者が購入する製品という形で再輸出される。中国の発展の現段階においては、国内需要では成長を維持できない。われわれのノウハウ、資本、消費という「エネルギー」なしには、巨大な中国経済という機械の「歯車」は回転困難な時期にいたるだろう。
 十分先の将来においても、米国と日本は、アジアにおける経済繁栄と安定のカギを握っている。われわれ2カ国は、アジアが主要な牽引となっている国際経済システムに対して指導力と賢明な管理者役を行使するという第一義的な責任を持っている。同様に、われわれは、それぞれの経済的、構造的、戦略的な課題を首尾よく克服するようお互いを援助する方法を考える必要がある。国際貿易交渉のドーハ・ラウンドが混乱しているなかで、われわれにとっては、単に経済だけでなく国家戦略にもしっかりと目を向けながら、経済パートナーシップの緊密さと深さを広げる方法を考えることがますます重要である。米国と日本は、2国間の自由貿易合意に向けた交渉を立ち上げることで、自由貿易と経済統合の力の促進と確保に向けてすばやく行動することを必要としている。これは、アジアで出現しているFTAのネットワークの拠点になるだろうし、世界経済全体にエネルギーを提供するだろう。
 自由貿易の交渉のための基盤がまだ存在していないと主張する人もいるかもしれない。実際、日本の規制制度を政府が約束しているグローバル・スタンダードに一致するようにし、その代わりに外国人と日本人企業家にとっての市場アクセスを高めるようにするには、多くの予備作業がまだなされなければならない。製薬、電話通信、医療サービス、農業、情報技術、エネルギーといった部門においては、効率性を高め、アクセスを広げるために削減することができるたくさんの具体的な障壁がある。金融サービスといった顕著な進展がみられる分野でさえも問題はまだ残っている。とりわけ、日本郵政システムの民営化が進むなかで、そのシステムを通じて商品を売買し、最終的には資産を購入するための外国人のアクセスに関しては、問題が残っている。
 同時に、自由貿易の良い兆候を示す強力な内部圧力も働いている。たとえば、日本の農業部門における人口統計の変動だけでも、保護主義的政策の根本的な変化を強いている。日本の農業部門は低下しており、そのGDPへの貢献は1990年の2.4%から2004年の1.2%以下へと半減している(GDPへの農業の貢献は、工業の20分の1に過ぎない)。農民の圧倒的多数は、パートタイムであり、「農業世帯」が農業から得ている収入は彼らの収入全体の4分の1にすぎない。さらに、農業人口は急激に減っており、今日の290万人から2015年には210万人という低さにまで減るという見通しである。65歳を超える農民の割合は、15から64歳の間の農民のおよそ倍である。数の上で増えつつある農民人口の唯一の部分は、70歳を超える部分である。信じられないことだが、2015年の日本における農業労働者の平均年齢は65歳を越え、老齢者はとりわけ過酷なコメ栽培部門に集中しているだろう。要するに、日本は農業において人口統計的な危機に直面しているのである。
 人口統計に駆り立てられて、日本は農業をよりいっそう自由化するための非常に強力な理由を持っているが、実行可能な代替案はほとんど持っていない。コメを含むすべての部門を交渉対象として、農業は米国と日本のFTAの中心になれるし、なるべきである。しかし、そうしたFTAは、日本の農民の感情と「コメ文化」を慎重に考慮する必要がある。自由化の課題のすっきりした解決策は、農民の引退と農業人口の減少を円滑かつ効果的に結合しながら、今後10年にわたって、関税引き下げを段階的にすすめることにあるだろう。同時に、日本国民は、自由化が日本における農業の抹消を意味するものではないことを認識する必要がある。リンゴ、牛肉、オレンジのようなすでに自由化が行われた部分に見られるように、野菜や果物、コメの農家は間違いなく、有機栽培のような高品質の得意分野に転換するだろうし、規模の経済を通じて効率性を高めることだろう。自由化は、農業においてさえも、日本にとってはウィン・ウィンの提案になりうる。
 こうした理由から、米国と日本は、包括的な自由貿易合意についての交渉をできるだけ早く始める意図を宣言すべきである。貿易促進権限法が近々期限切れを迎えることで、FTA合意は2008年の選挙の前にはありそうもないが、米国と日本の指導者らは、それにもかかわらず、この目標を視野に入れておくべきである。この合意は、関税と税関手続きを調整するだけではなく、太平洋の両側において生産性を著しく向上させるという目標を持って、規制と投資環境の一致を目指していっそう深い内容に到達するだろう。ドーハの義務と両立するFTAは、日本の市場における外国人と新規参入者のための機会を顕著に促進しながら、条件を公平化し、全体的に透明性を高めるだろう。また、正しく行われるFTAは、間違いなく日本での米国の投資へより広く門戸を開放するだろうし、そのかわり、高齢化する社会に直面しているなかでさえも構造調整の課題を日本が達成することを支援するだろう。今後20年以上にわたり、米日FTAは、日本の対内直接投資のレベルをGDPの2.1%からGDPの14%という米国のレベルへと引き揚げることを目指すべきである(そうなったとしても、GDPの20%というG7平均を下回っている)。
 最後に、そして決定的な点として、WTOと両立する2国間自由貿易合意は、この地域の市場経済のネットワークの拠点として役に立つことができる。特に、米日FTAは、米国がシンガポール、オーストラリア、韓国、マレーシア、タイと結んでいるかあるいは交渉しているFTA網の一部分となりうるだろう。これは、中国がWTOの義務を果たすための力強い誘因になるだろうし、重要なことに、この質の高いFTA網の部分ともなるだろう。
 要するに、包括的な米日自由貿易合意の直接的な経済利益は相当なものになるだろうということである。しかしながら、アジア太平洋州の共同体のすべての構成員にとっての政治的、戦略的な利益は、さらに大きなものになるだろう。米国と日本にとって、経済同盟の合意に署名すること――それは米日安全保障条約を基礎付けているものとまったく同様に強力な共通の核心的原則に基づいている――は、この地域と世界に著しく強力なシグナルを送るだろう。それは、経済的かつ政治的に、われわれ2カ国が国民の未来と世界の安定、繁栄のために同じ夢と願いを共有しているということを示すだろう。
 
安全保障
 米日同盟の安全保障の側面はこの数年の間に顕著に成熟した。小泉首相の指導力と政治意思は、インド洋、イラク、中東のその他地域への展開によって、国際舞台における日本の地位を高めるものとなった。この点に関して、わが同盟の相対的力量を測る2つの重要な基準がある。第1は、同盟がどこまできたかという到達点の検討にもとづくものであり、第2は、同盟の現在の有効性、また将来その有効性を維持するために何が必要か、にもとづく。
 両国の安全保障関係でなされた前進を否定することはできない。米日安全保障関係は、その存続したほとんどの期間にわたって、次の2つの基本原則にもとづいて運営されてきた。1つは、米国は日本とその施政下にある地域を防衛する、ということであり、もう1つは、日本は極東の安全のために国内の米軍に基地と施設を提供する、というものである。これは、日本が自らに課した専守防衛とともに安全保障上の枠組みを形づくり、最近にいたるまでその不可避的な主従関係を余儀なくしてきた。日本の自衛隊が、「不朽の自由作戦〔アフガニスタン〕」を支援してインド洋に展開し、復興努力を支援してイラク内および周辺に展開したことは、東アジアの地理的範囲を越えて貢献をおこなうという日本のイニシアチブを示すものとなった。日本の積極的な海外作戦参加は、日本の世界的な利害をよりよく反映したものであり、これまで米日関係の特徴だった安全保障上の上下関係を弱めるのに役立った。
 米国と日本はまた2005年に、2004年12月の東南アジアにおける津波の後の救援活動で、緊急に必要とされる軍事的・財政的貢献をおこなうために協力した。さらに米国と日本は、インドやオーストラリアとともに、「中核グループ」をつくって、国連が役割を引き受ける準備ができるまで、国際的な救援活動を調整し監督した。他の諸国とも協力しながらすすめられてきた、この大規模災害にたいするわが同盟の対応は、スピードや、必要とされる内容と規模をもったものだった。
 地域におけるミサイル拡散の脅威の増大に対処するために、米国と日本は協力して、ミサイル防衛の技術と構想を開発してきた。米日は現在、世界1位・2位の経済大国の技術力を共有しつつ、ミサイル防衛システムの生産と採用をすすめている。この重要な事業に協力することで日本は、その統合作戦システムや、重要な情報を迅速に共有するための両国間の能力を改善するなど、ミサイル防衛指揮統制システムによる相乗効果から利益を得ることになる。お互いにミサイル防衛システムの生産と採用を順調にすすめるために、日本はその軍事関連輸出の禁止措置を変更して、米国への輸出を可能にした。これらすべての措置によって同盟は、現在の安全保障環境がもたらす挑戦にこたえるための防衛協力で急速な進歩を遂げた。
 第2の基準は、両国の現在の有効性、また将来の挑戦にこたえるために何をなすべきか、にもとづいている。この点では、過去5年間になされた積極的な変化を考慮しつつも、両国の安全保障環境を前進させ、そのことによって、アジアにおける積極的で前向きのプレゼンスを支援するために、なお多くのことをなすことができる。この点で必要なのは、安全保障問題でのより大きな協力にとどまらず、この問題での日本の役割と自己認識を作り直すことである。日本はグローバルな影響力をもつ国である。しかし日本は最近まで、安全保障分野では強く自己規制してきた。日本がこの分野での突出を嫌ってきたことは歴史から説明がつくとはいえ、直面する挑戦や、グローバルな指導的役割を求める日本自身の願望から見て、こうしたやり方で今後も間に合うかどうか、将来的には意見の一致が求められる。
 日本の平和維持活動や災害・人道支援活動は、この地域や世界中の諸地域にたいする重要な貢献となってきた。同様に、過去数年間に日本の安全保障環境はますます挑戦を受けるようになり、困難なものになった。同盟は、日本の安全保障の主要な構成部分である。しかし重要なのは、日本は自分自身の防衛の主要部分を担う点でも責任を引き受けることである。その中には、自国民や死活的なインフラ、および在日米軍区域を適切に守るためのミサイル防衛能力が含まれる。日本側における適切な防衛には、統合作戦の指揮・統制・通信・情報・監視・偵察(C3ISR)能力、ならびに、さまざまな緊急事態に対応する能力も含まれる。米国はひきつづき、日本の安全保障の重要な側面であり続けるが、日本は、自分自身の防衛に必要な分野でもっと多くのことを適切に担うことによって、同盟をより対等のものにしなければならない。

米国に何が求められているか

 われわれが、東アジアの将来に良くも悪くも影響する最も重要な変数の1つが米国の立場に関連していることについても認めなければ、怠慢となるだろう。事実上、国力についてのあらゆる基準で、米国の優越性が2020年まで維持されることはほとんど疑いないとはいえ、アジアでの事態形成にたいするわれわれの相対的影響力が時とともに弱まっていく可能性を無視することはできない。これが確実であるとは到底いえないが、地域での指導的役割を維持するために、米国の政策立案者はひきつづき、われわれの影響力を侵食する挑戦にたいする警戒を怠ってはならない。言い換えれば、アジアにおける米国の優位は、永久不変なものではないのであって、そのように対応しなければならない。
 第一に、米国は、自らをアジア・太平洋国家とみなし、アジアの生活の全側面に関与することを決定しなければならない。もっとも順調な時でさえ、米国は多くのアジア人から気まぐれな国と見られ、あまりにしばしば偏狭な国内利益やイデオロギー的規範によって動いていると見られている。しかし、より悪いことに、多くの人々の意識の中には、〔米国の〕アジアへの長期にわたる無関心の傾向が映っている。もちろん、米国は現在、世界の別の地域に戦略的に手を取られているとの言い分も成り立つだろう。アジアへの関与が今後も時折おこなわれるだけで、十分に上級レベルの米当局者の関与が見られないままであれば、地域における主要国の序列に変化が起こりうる。緊急事態がない場合でも、中国がひきつづきその力の及ぶ範囲を拡大し、また米国が地域の主要国であり続けることへの信頼を地域全体が失うなら、米国の影響力のゆるやかな衰退は起こりえる。
 アジアの生活において米国が活発であり続けるための課題は多い。2020年までに米国が地域で効果的に行動をおこなうための財政的かつ軍事的な手段を保持するかどうか、深刻な疑問が存在する。膨大な財政赤字、国債の増大、軍の過剰展開、さらに国内的要請(老齢化する社会のための医療保険や社会保障から、公教育の復興の必要性まですべて)はいずれも、米国政府の意図にかかわらず、米国がアジアに影響を与える能力を左右しうる。
 それでも、アジアでの影響力を断固として維持する意思をもつ米国の政策立案者にとって、打開策は存在している。しかし、地域における二国間および多国間関係の巧みな運営で見出されるのは、その打開策の一部にすぎない。われわれが前進するに当たっては、われわれの課題にかんする冷静な自己認識もまた求められる。われわれは、自らの経済状態を立て直すために働くだけでなく、われわれの軍事的必要性にも対処しなければならない。われわれは、日本がそのソフトパワーを地域やそれを超えた諸問題に適用する能力に注目した。われわれは、ハード、ソフト両面のパワーを交渉の場にもたらす能力を向上させる必要を認識している。アジア・太平洋地域は、地理的には大洋、海、戦略的海峡が大きな位置を占めている。それは、海軍の活動する領域であり、そのため米国は引き続き軍事調達を追求するとともに、海軍活動領域に見合った適切に関連付けられた軍事戦略を採用する必要がある。

勧告――2020年に向けた課題

 われわれは勧告を四つのカテゴリーに分類した。主要には、関心あるこの報告の読者が、そうでなければ長大で扱いにくくなりかねないリストを、より容易に理解するのを助けるためである。われわれが選んだカテゴリーは、優先順位や序列、カテゴリーごとの二律背反を意味するものではない。勧告のリストは、一体のものとしてとらえ、広範かつ強固な課題として受け止めるべきである。われわれが提案するのは、日本への勧告(日本政府が独自に取る措置)、米日同盟への勧告(多くは両国関係の枠内の措置)、地域政策への勧告(アジアの他の諸国にたいし、米国と日本が進める措置や、多国間外交に関する措置)、そして地球規模の政策への勧告(アジア以外の諸国や地域にたいして、また地球規模や機能的な諸問題にたいして、米国と日本がとる措置)である。

日本への勧告
 日本は、国内的な性質を持つ多くの個別的な決定に直面するだろう。日本がいかに、きちんと行動し、憲法問題を解決し、その資産を活用する道を選ぶかについてのきわめて具体的な決定は、日本自らが下さなければならない決定ではあるが、米日パートナーシップに大きな期待を抱く同盟パートナーとして、米国は日本がこのような諸問題にどのように取り組むかに強い関心を抱いている。われわれは、この精神から、客観的な観察者が日本の国内的決定事項だと正しく認めていることについて、日本への勧告を提案するものである。
  1. 日本は、もっとも効果的な意思決定を可能にするように、国家安全保障の制度と官僚機構をひきつづき強化すべきである。現代の挑戦が日本に求めているのは、外交・安全保障政策を、とりわけ危機の時期にあたって、国内調整と機密情報・情報の安全性を維持しながら、迅速、機敏かつ柔軟に運営する能力を持つことである。
  2. 憲法について現在日本でおこなわれている議論は、地域および地球規模の安全保障問題への日本の関心の増大を反映するものであり、心強い動きである。この議論は、われわれの統合された能力を制限する、同盟協力にたいする現存の制約を認識している。この議論の結果が純粋に日本国民によって解決されるべき問題であることを、われわれは2000年当時と同様に認識しているが、米国は、われわれの共有する安全保障利益が影響を受けるかもしれない分野でより大きな自由をもった同盟パートナーを歓迎するだろう。
  3. 一定の条件下で日本軍の海外配備の道を開く法律(それぞれの場合に特別措置法が必要とされる現行制度とは反対に)について現在進められている討論も、励まされる動きである。米国は、情勢がそれを必要とする場合に、短い予告期間で部隊を配備できる、より大きな柔軟性をもった安全保障パートナーの存在を願っている。
  4. CIAが公表した数字によると、日本は、国防支出総額で世界の上位5位にランクされているが、国防予算の対GDP比では世界134位である。われわれは、日本の国防支出の正しい額について特定の見解を持っていないが、日本の防衛省と自衛隊が現代化と改革を追求するにあたって十分な資源を与えられることがきわめて重要だと考えている。日本の財政状況を考えれば資源が限られているのは確かだが、日本の増大しつつある地域的・地球的な責任は、新しい能力およびそれに与えられるべき支援を必要としている。
  5. 自ら課した制約をめぐる日本での議論は、国連安保理常任理事国入りへの日本の願望と表裏一体である。常任理事国となれば、日本は、時には武力行使を含む決定を他国に順守させる責任を持った意思決定機関に加わることになる。ありうる対応のすべての分野に貢献することなく意思決定に参加するというその不平等性は、日本が常任理事国となろうとする際に対処すべき問題である。米国は、ひきつづき積極的にこの目標を支援すべきである。
米日同盟への勧告
 2000年のわれわれの報告以降の著しい進展にもかかわらず、〔米日〕2国間関係における投資と取り組みは、経済・安全保障環境の引き続く変化に対処するよう、強化されなければならない。付属文書の序文で記した通り、われわれは、この報告の本文に含める勧告の性格の一貫性を保つことを追求した。そのため、われわれは、多くの場合、戦術的で、具体的で、難解な、軍事および安全保障分野での勧告を明らかにする付属文書をつくった。以下は、より広範囲の勧告である。
  1. 米国と日本は、一連の具体的な取り組み(付属文書参照)を通じ、軍事・安全保障分野における協力を引き続き強化しなければならない。
  2. 地球的規模の米日同盟は、引き続き、一貫した積極的な力である。核攻撃から日本を守るとの米国の誓約を含むわれわれの安全保障上の誓約のもっとも根本的な側面が、両国の最高位の政府当局者によって繰り返し言明され、強調されなければならない。
  3. 米国と日本は、包括的な自由貿易協定交渉を開始する意思があることを宣言すべきである。貿易促進権限法の期限切れ問題が未解決のため、近い将来にFTA(自由貿易協定)を締結することはなさそうだが、米国と日本の指導者は引き続きこの目標を視野に置くべきである。ドーハ基準に一致する合意は、米国と日本に直接の経済的利益をもたらすだろうし、アジア・太平洋地域社会のすべてのメンバーにもたらす政治的・戦略的利益はそれ以上に大きいだろう。
地域政策への勧告
 米日同盟は引き続き、アジアの未来を形作る。しかし、わが同盟がこの地域にたいしてどのような立場を取るかによって、大きく異なるアジアの2つの未来の可能性があることが想像できる。1つの未来は、最適の結果ではなく、〔同盟による〕狭く、限定的で、孤立した関与を特徴としている。2つ目は対照的な未来で、地域の経済・政治・安全保障分野における前向きな発展のための積極的勢力としての同盟によって規定されるだろう。われわれの勧告は、アジアを方向づけるしっかりとした課題を採用する米日同盟によってアジアとアジアの人々はずっとより良い状態となる、という命題にもとづく実践的課題を採用し、実施するというものだ。
  1. 米国と日本は、中国の将来の方向によってその国益が最大の影響を受ける2つの国家といえ、同時に、その方向たいして最大の影響力を持つ2国家でもある。米国と日本は、中国にたいする同盟の組織的対応をつくりあげるため、緊密に協議しなければならない。この対応の一部においては、中国の国益は一定の分野では米国と日本の国益と合致しつつあり、3国間協力で利益を得る可能性のあるような分野においてはその努力が追求されるべきである、ということを認識しなければならない。中国の国益は、米国や日本のそれと重複するかもしれないが、同一ではない。北朝鮮やイランのような政権に彼らの態度を改めるよう促し、また台湾への対応では平和的手段のみを採用する点で、中国のより積極的協力が必要とされる重要な分岐点を示し、米国と日本は、中国が責任ある利害共有者となる方向に注意を喚起することを追求しなければならない。
  2. 米国と日本は、インドとの間でそれぞれ戦略的なパートナーシップを強化し、3カ国間協力にむけた適切な機会を追求しなければならない。民主主義と人間の自由という共有する信条は、関係強化のための政治的基礎となりうる。しかし、米国と日本は同時に、インドが自らの戦略態勢の中心的基盤として市場を基盤とした経済改革と規制緩和を質的に深化させるよう、奨励し支援すべきである。
  3. 米国と日本は引き続き、短期的には朝鮮半島への関心を維持し、安全保障分野での協力強化の努力を強めるべきである。加えて、米国と日本は、北東アジアの5大国(米国、日本、中国、韓国、ロシア)間で、問題の解決には多国間協力の方が適しているかもしれない機能的課題を識別することに、積極的であるべきである。そうした取り組みが米国と日本の国益を促進させることに効果的だと証明されれば、北東アジアの枠組みは、より大きな地域機構の準地域的〔下部〕構成要素に発展することができる。
  4. 米国と日本は、ASEAN――米国や中国、日本との関係を拡大するだけでなく、米国と日本が信奉する規範および安全保障上の実践に基づいてその内部問題を処理するASEAN――の統合を促進すべきである。ASEANの将来にとって鍵となるのは、単一の経済・金融空間を確立するというその目標を実現することだ。インドネシアの指導者たちは、ASEANにとってそのような将来像を心に描いているが、協力の程度は、インドネシア自身の経済成長と国民の繁栄がどれだけうまくいくかどうかによって左右される。米国と日本は、繁栄と民主主義、安全保障をASEAN諸国にもたらすインドネシアの取り組みを支持すべきである。
  5. 豪日関係と米豪日の3カ国協力は、初期の段階にあるものの、発展している。米国と日本は、人権から宗教の自由、経済的成功の拡散にいたるまで、同じ考えを共有する、3つの長期にわたる民主主義国家の協力によって得られる相乗効果を十分活用することを確かなものとする努力を強めるべきである。この3カ国協力は、政治的かつ実践的なものでなければならない。
  6. シーレーンはアジアの生命線である。海洋国家である米国と日本は、海事安全保障と海賊対策の問題で、重要な能力を提示できる。地域においては、シーレーンの安全保障と公海の安全にたいする多国間の取り組みが論議されており、米国と日本は、地域の海事安全保障政策の策定と履行について指導的役割を維持するべきである。
  7. 米国と日本は今、先進国の経済自由化というボゴール目標の期限である2010年に日本で開催されるAPEC首脳会議を効果あるものとする準備に取り掛かるべきである。これは、アジア・太平洋自由貿易圏という米国の構想を実現化させる足掛かりとなるだろう。
  8. 米国と日本は、東アジア首脳会議のようなアジア地域の協議機構と既存の環太平洋の協議機構(とりわけAPECおよびASEAN地域フォーラム)との間の補完的関係の形成について協力すべきである。米国と日本は、相互に、また価値観を共有する諸国との間で定期的な会合を持ち、民主主義と法の支配を支持する課題を促進する地域機構を奨励するべきである。
地球規模の政策への勧告
 米日同盟は、地球規模の到達範囲と地球規模の影響力を持つ。この同盟は、増大した能力と明確な政治的誓約によって、地球規模の幅広い問題にたいする積極的な勢力であり続ける。米国と日本は2020年まで、文字通り地球上のすみずみまで影響を与える経済的および軍事的手段を持った、二つのもっとも重要な民主主義国家であり続けるものと、われわれは考える。このことは負担と責任を伴うものであり、われわれの見解では、同盟としての地球規模の関与についての高度な戦略を必要とする。
  1. 米国と日本は、エネルギー協力を強化すべきである。主要なエネルギー消費国(米、日、中、印、韓国)の対話は、石油輸入国としての共有された利益にもとづく課題を構築すべきである。それは、いかなる国の個別的なエネルギー安全保障の必要も満たし得ない領有権主張や資源競争ではなく、市場の力、エネルギー効率、技術を支援する課題である。その原則は、エネルギー安全保障はゼロサム・ゲームではないということでなければならない。国際エネルギー機関(IEA)の代表者に日本人が任命されたことは、この機関に中国とインドを全面的に参加させることの重要性を強めている。今後、エネルギー安全保障政策を調整する中印両国の責任は増大するだろう。
  2. 米日同盟は、アジアと世界の先進国と発展途上国の間の架け橋となり、気候変動に取り組む国家的、地域的取り組みを強め、統合するのにうってつけである。
  3. 地球規模の対テロ戦争は、問題を正確に捉えていない誤った命名である。実際には、これは過激主義との戦いであって、軍事的手段で対応できるのはそのわずかな部分にすぎない。過激主義に対抗し、アラブ世界での進歩――『国連アラブ開発報告』で示されているような――を奨励するにあたって、日本の豊かなソフトパワーは、長期におよぶ過激主義の根源に向けることができる。増大しつつある過激主義に対抗し、それへの代案を提示するために、開発援助といったソフトパワーを戦略的に位置づけることは、日本にとって重要な地球規模の使命である。
  4. 日本は、貧困や伝染病を軽減する取り組みで世界的なリーダーとなるのに理想的な位置にあり、この役割を追求するよう奨励されるべきである。米国と日本は、互いの対外援助戦略について定期的に協議し、可能な分野での相乗作用や妥当な任務分担をめざすべきである。
  5. 米国と日本は、世界貿易機関、国際通貨基金、世界銀行、世界保健機関などの地球規模の機関内で、特別な責任を負っている。米国と日本は、これらの重要な機関への関与を維持し、それらが世界的な経済および健康の諸課題を軽減するのに貢献するように全面的に方向付けられることを保障するため、それらの機関の諸課題を形成する上で指導力を発揮すべきである。

結論

 6年前に発表した報告で、われわれは、米日関係の歴史を考察し、150年以上にわたって「米日関係は、よきにつけ悪しきにつけ、日本とアジアの歴史を形作ってきた」と指摘した。新しい世紀の課題を展望しつつ、同報告は、「両国が個々にそして同盟のパートナーとして対応する」やり方が、「アジア・太平洋の安全と安定および新世紀の可能性を大きく決定することになるだろう」との見解を結論とした。
 その判断はいまなお有効である。
 実際、新しい世紀の課題――過激なイスラム原理主義による欧米の価値観への攻撃、テロを含む国際的な過激主義、大量破壊兵器とその運搬システムの拡散、岐路に立つ国家の台頭――は、米国と日本の個々の、また同盟パートナーとしてのさらに大きな努力を必要としている。われわれの利益は安定にあり、そのために米国、日本、中国、東アジアのすべての諸国は支援的役割を果たすことができる。とりわけ、東アジアの安定は、米、日、中の三国の関係に依存しており、われわれの強力な日本との同盟に加えて、その関係を育成していく必要がある。日本による、アフガニスタンでの米国への支援、イラクの戦後復興への貢献、拡散にたいする安全保障構想(PSI)への早期の参加に特徴付けられる協力の取り組みは、将来のより緊密な協力のための確固とした礎石となっている。われわれは、多くを与えられた者には多くのことが期待される、という所見をのべて、この報告を締めくくりたいと思う。

付属文書:安全保障および軍事面での協力

 われわれは、米国と日本の間の安全保障および軍事面での協力の質の向上をめざして、多くの非常に具体的な勧告を持っている。この報告に盛り込まれた多くの勧告のリストを振り返る中で、われわれは、軍事分野での勧告と経済、政治、外交分野での勧告の性質の間の不整合に気づいた。軍事面の勧告は多くの場合、戦術的、具体的、専門的であるのにたいし、他の分野でのわれわれの勧告は、より戦略的かつ一般的である。このように、われわれの報告の主文に盛られた諸勧告の間に実質的な首尾一貫性を保つために、われわれは、軍事および安全保障の分野でのわれわれの勧告を提示するために付属文書を作成することで一致した。

 われわれは、米国と日本の間の安全保障および軍事面での協力の質を向上させるため以下の措置を勧告する。
  • 米国と日本は、緊急の危機に対する能力を向上させるべきである。日本の平和維持、人道支援、災害救援の諸任務にたいする能力も、強められなければならない。日本は、人質救出を計画し、必要な技能を発展させなければならない。日本は、現行法にのべられたこれらの任務の分野の優先順位を引き上げることを検討すべきである。これら分野に十分に取り組めるように日本の国防能力を引き上げることが、日本の自衛隊の配備や2020年にかけて日本が直面する安全保障環境を考えれば、必要となっている。
  • 日本は最近、いわゆる「武器輸出三原則」を修正し、米日ミサイル防衛計画への参加拡大の道を開いた。次の一歩として、日本は、のこる禁止事項を解除すべきである。日本政府はまた、自国の民生産業基盤による国土安全保障と国防技術の開発へのより大きな関与を積極的に奨励すべきであり、日本の多額の科学技術予算から、国防関連技術の研究計画に資金を振り向けることを認めるべきである。特に、最近の事態に照らして、日本は、弾道ミサイル防衛への特別の予算を組むことを検討すべきである。
  • 米国と日本は、タイコンデロガ級イージス・ミサイル巡洋艦の後継機種CG(X)の中心システム、関連システム、関連技術の共同開発の機会を検討すべきである。CG(X)が、国家ミサイル防衛および次世代の脅威にたいする拡大対空防衛の双方で、きわめて重要な役割を果たすのは間違いない。
  • 米日の政府対政府、軍対軍の関係が改善するとともに、われわれはより緊密な国防産業間の協力も打ち立てるべきである。米国への軍事関連輸出の道を開くという日本の決意は、ますます高価となっている国防装備の開発・維持・製造の効率を高め、相互運用性を向上させる機会をもたらしている。政府間の機密情報の秘密保持のための包括的な協定を結ぶことは、この方向での重要な一歩である。さらに米国と日本は、公開可能性の問題を話し合うためのフォーラムを発展させるべきである。
  • よりよい調整のために、米国は、米太平洋軍への日本の防衛省代表の配置、また統合幕僚監部への米軍代表の配置を促進すべきである。これは、地域での作戦統合の強化にむけた第一歩とみなすべきであり、集団的自衛についての日本の国内的決定いかんにかかわらずおこなわれるべきである。
  • 米日防衛協力のためのガイドラインの中で発展させられた「日米間の調整メカニズム」は、すばらしい枠組みである。しかしながら、両国の調整は、「共同統合運用調整所」〔=外務省訳、直訳は「二国間共同作戦司令センター」〕を全面的に実行することで、作戦レベルにまで拡大すべきである。
  • 情報共有は急速に強められてきた。情報協力は、核とミサイルの拡散や、過激主義やテロ活動、その他の地球規模の非常事態に対応するためにいっそう強化しなければならない。これをよりよく促進するために、日本は、より大量の情報成果を受け取り、処理する能力を向上させるべきである。米国と日本は、国家地球空間情報局〔旧「国家画像地図局」。2004年に改称。国防総省傘下〕の活動で緊密に連携すべきである。
  • われわれは、通信、早期警戒、情報の分野での安全保障協力を向上させるため、日本が宇宙空間の利用に関心を持っていることを歓迎し、国会がこの問題を討議する意向であることを関心をもって注目する。
  • 米国は、できる限り早期に、日本にF22の一個飛行中隊を配備すべきである。米国は、日本の航空自衛隊が、F18E/F、F22、F35、さらに(あるいは)現有F15の改良機を含め、 米国の保有する最も先進的な戦闘機システムを入手することを保障するよう努めるべきである。
  • 安全保障環境、またわれわれの地球規模の利益に取り組むやり方が進化するにしたがって、同盟は、二国間協力を強化し、能力を向上させるべき分野を特定し、われわれの二国間の指揮管制システムを改良していくために、役割や任務の見直しをおこなうべきである。