声明 防衛省の「反戦デモ」敵視の資料作成に強く抗議する - 市民の権利行使を敵視する自衛隊への変質は許されない -

声明 防衛省の「反戦デモ」敵視の資料作成に強く抗議する
- 市民の権利行使を敵視する自衛隊への変質は許されない -

 3月30日の衆議院外務委員会で、防衛省陸上幕僚監部が2020年2月に記者を対象とする勉強会で配布した資料、安保法制(戦争法)を発動する事態の一つである「グレーゾーン事態」の事例の一つとして、市民による「反戦デモ」をあげていたことが明らかにされた。「反戦デモ」との表現はその後「暴徒化したデモ」に修正されているが、自衛隊が主権者としての当然の行動であり、重要な基本的人権である「デモ行為(表現の自由)」を敵視し、弾圧、抑圧の対象ととらえていたことは隠しようのない事実である。
 実力組織である自衛隊の暴走は市民にとって極めて危険であり、立憲主義ともかかわる文民統制からの重大な逸脱である。
 政府として、資料作成の経緯や事実経過を検証し、詳細に明らかにするよう強く求める。

 「グレーゾーン事態」とは安保法制(戦争法)で規定されたもので、平時から緊急事態に至る段階、武力攻撃に至らない事態での自衛権と警察権の隙間をうめて「切れ目のない安全保障」を実現するものだとされる。安保法制では、そのために自衛隊による警察権行使の適用を拡大した。そして、その拡大範囲の事例として「武力行使に至らない手段により、自らの主張を受け入れるよう相手に強要する」事態が検討され、その一つの類型としてテロ等と並べて「反戦デモ」を掲記したものである。
 この資料作成の流れでいえば、自衛隊の活動を批判し、憲法9条実現の立場から戦争する国づくりに反対する市民の声を形にする「デモ」なども自衛隊による監視、抑圧の対象となりかねない。民主主義実現のための市民の重要な手段であるデモを敵視したことは極めて不当であり、「暴徒化したデモ」と言い換えてもその事柄の本質の問題は変わらない。

 安保法制制定の過程では、「グレーゾーン事態」の例として他国の潜水艦が領海を徘徊する場合や、海上保安庁等が速やかに対処することが困難な海域や離島での船舶や民間人に対する武装集団の不法行為などが挙げられていた。国内で陸上自衛隊が治安目的で警察権を行使することは、国会審議等でもほとんど説明されてはいなかった。
 その点からしても、今回明らかになった資料は、自衛隊の過剰な権限拡大であり、暴走の類だと言わざるを得ない。
 かつて自衛隊の情報保全隊が、イラクへの自衛隊派兵に反対する市民の行動を「反自衛隊活動」と一方的に断定して監視の対象とした事件があり、裁判所で違法行為として断罪された経緯がある。確定したその判決に真摯に向き合わず、市民の行動を敵視する自衛隊の体質が温存され続けていることも今回の問題で明らかになった。
 昨年成立した土地利用規制法の運用に当たっても、自衛隊による市民監視の強まりへの懸念が指摘されており、その点でも今回の問題は軽視できるものではない。
 改めて強い抗議の意思を表明し、市民の基本的人権擁護の実現の上に治安維持を置く自衛隊の体質を抜本的に改めるよう重ねて求める。

2022年4月6日

戦争する国づくりストップ!憲法をまもり・いかす共同センター
(略称:憲法共同センター)