他国を攻撃する軍事大国化を迫る自民党提言に強く抗議する(談話)

他国を攻撃する軍事大国化を迫る自民党提言に強く抗議する(談話)

 4月26日に自民党は、年内に政府が取りまとめるとしている「国家安全保障戦略」などの改定にむけて同党の安全保障調査会が取りまとめた提言を了承し、翌日、政府に提出した。
 その内容は、他国のミサイル発射基地などを破壊するための装備と態勢の整備を意味する「敵基地攻撃能力」について「反撃能力」と名称を変えて保有を求め、攻撃対象の範囲についても基地に限定せず指揮統制機能など軍事、政治の中枢も含めることを盛り込むなどである。そして、その態勢の整備等に必要な軍事費について、GDP(国内総生産)比で2%以上とすることを5年以内に達成するように求めた。

 憲法第9条は、国際紛争を解決するための手段としての武力行使を永久に放棄し、そのためにも戦力を保持しないと明記している。自民党の提言は、その憲法を逸脱し、戦争による紛争の解決をおこなう国に変質させ、他国攻撃可能な戦力の保持を宣言するよう政府に迫ったものと言わざるを得ない。
 言葉を「反撃能力」と言い換えても提言は、他国の無辜の市民を犠牲にする戦闘のために、攻撃能力の高い武器を保有し、それを活用できる自衛隊となることを求めている。中国や北朝鮮、ロシアの「脅威」をことさら煽っているが、その脅威を取り除く外交努力には一言も触れず、安全保障と言えば武力という軍事優先に取りつかれた提言である。これでは、東アジアの軍拡競争を過熱させ、近隣諸国の日本への不安を高め、紛争の勃発の危険性を高めるだけであり、安全保障戦略の名に値しない。

 提言は、日米の軍事同盟強化を前提に、中国包囲や台湾有事を想定した日本とアメリカの軍事的分担と能力向上のために自衛隊の攻撃力を高めようというものである。他国から攻撃を受けた際に最小限度の自衛のための防衛力を行使するとした専守防衛とは異質のものであり、自衛隊が市民のいのち、くらしを守る組織とは言えなくなる提言内容である。
 そのような自衛隊の変質のために、年間11兆円相当の軍事費(世界第3位)を充てることは、その分、社会保障や教育費など市民のくらしのための予算を削減することになるのは明らかで、「ミサイルのために市民のくらしを犠牲にする」ことを求める提言だともいえる。長引くコロナ禍でも露見したように、雇用破壊と賃下げによって深刻の度を増した貧困を放置し、健康で文化的なくらしをすべての市民に実現する国の役割発揮を投げすてるよう政府に迫る提言だと言っても過言ではない。

 昨年の総選挙以降の改憲論議の過熱や、ロシアのウクライナ侵略という惨事に便乗した軍事力強化の扇動は、「国際紛争の平和的手段による解決」を求める国連憲章にも、その立場でロシアのウクライナからの早期撤退を求めて努力を積み重ねる国際社会の努力とも相いれない。提言は、平和憲法を持つ国の政権党の立ち振る舞いとしても問題である。
 ウクライナの戦禍でも明らかなように、武力による紛争の解決は絵空事であり、一度始まった戦争は容易に収まらない。戦争回避の努力こそ最大の安全保障であることは、このことからも明白になっている。惨事便乗の過激な主張に引きずられた自民党の提言に強く抗議し、それにそった検討を政府は行わないよう強く求める。 

2022年5月2日
戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター