「裏金」議員に憲法を語る資格はない(声明)
- 憲法審査会の委員を辞するよう強く求める -
憲法審査会は、「日本国憲法および日本国憲法に密接に関連する基本法制の広範かつ総合的な調査を行い、憲法改正原案、日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案等の審査を行う機関」とされ、衆議院50名、参議院45名の委員で構成される。
開会中の第213回通常国会での参議院・憲法審査会の自民党委員22名中、13名が解散した安倍派(清和会)に所属し、内9名の議員が派閥からパーティー券収入のキックバックとして「寄付」を受けていたことが、1月31日に安倍派が訂正した政治資金収支報告書(2020~22年の3年分)で明らかになった。その内、1519万円のキックバックを受けた山谷えり子議員、234万円の西田昌司議員は、委員会の運営に関与する幹事予定とされている。
衆議院の憲法審査会では幹事ではないものの、970万円のキックバックを受けていた衛藤征士郎議員など5名が委員になっている。
多額の「裏金」がどのようにして作られ、どう使用され、誰が管理していたのかなどについて、どの議員も説明責任を全く果たしていない。議員側の政治団体の政治資金収支報告書を訂正すれば済む問題ではない。仮に、収支の明細も明らかにできない状態で「裏金」が使われていたのであれば、派閥からの「寄付」は雑所得として課税対象となり、議員本人の脱税が疑われる。東京地検特捜部が、3000万以下の「裏金」については刑事訴追しなかったからと言って、違法性が消えたわけではない。
順法精神にかけ、疑惑にまみれたままの議員に、国の最高法規の憲法を調査し、憲法改正原案等を論議する資格はない。憲法審査会の委員をすみやかに辞するよう強く求める。
改憲をめぐっては、1月30日の施政方針演説で岸田首相が「あえて自民党総裁として申し上げれば(9月までの)任期中に(改憲を)実現したい」と明言するという異常な状況にある。公明党の北側副代表は1月31日に緊急事態条項について「議論が熟しているので、条項案を党としても検討したい」と述べるなど、改憲を加速させる動きも急である。それだけに、憲法審査会のあり方を軽視するわけにはいかない。
憲法は前文に「国政は国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」と明記しており、憲法という基本ルールの論議は国民の負託を得て進められるべきである。様々な世論調査でも、当面の政治課題として改憲を選択する国民は一けた台と低く、現政権での改憲を求める世論も少数である。岸田首相等の発言は憲法と民主主義のルールから逸脱している。
また、今回問題となっている「裏金」問題は、禁止されている政治家個人への企業・団体からの献金のう回路として政治資金パーティーが行われていたことが疑われる。主権の行使ができない企業・団体が「カネ」の力で政治をゆがめることは、国民の主権への不当な侵害にほかならない。その点で、「裏金」問題は民主主義そのものの問題であり、全容解明に背を向けたまま国政の最重要課題と言える憲法論議に参画することなど許されるはずがない。かさねて「裏金」疑惑にまみれた議員に、憲法審査会委員を辞するよう求める。
2024年2月5日
戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター