菅義偉首相の退陣にあたって(声明)

菅義偉首相の退陣にあたって(声明)

 9月3日、菅首相は自民党総裁選挙に立候補しないと述べ、事実上の首相退陣を表明した。

新型コロナウィルス感染が収まらない中、世論に示された市民の声や専門家の意見に耳をかたむけずに東京オリンピック2020の開催を強行し、爆発的な感染拡大を招き、医療にたどり着けないまま生命を落とす方が多数発生するという、あってはならない事態を作り出した失政への市民の激しい怒りに追いつめられた結果の退陣である。

各種の世論調査すべてで内閣不支持率が支持率を大きく上回り、足元の横浜市長選挙でも菅首相の応援候補が大差で敗北するなど、市民の怒りは形で示されていた。

菅首相が支持を失ったのは、市民の切実な声や願いに誠実に向き合おうとせず、野党の臨時国会開会要求を拒否して憲法を蹂躙し続け、国会を軽視し、国民に対する説明責任を果たさないなど、権威主義的で傲慢な政治姿勢に終始したからにほかならない。

そのような政治姿勢は、2012年以降の安倍政権から続く、お友達、身内、支持者の声だけに耳を傾ける政治の私物化、政官財癒着の深刻化とも不可分の安倍・菅政治の悪弊である。

加えて菅政権は、日本学術会議会員6人の任命を拒否し、学問の自由を政府が侵害するという人権侵害を行いながら、いまだに拒否理由さえ明らかにしていない。

安倍政権を承継し、違憲の安保法制・戦争法を実行する敵基地攻撃のための武器保有や、台湾有事の際にアメリカと一体で軍事行動を起こすことを日米政府で合意し、コロナ禍を契機にした憲法への緊急事態条項創設の動きを加速させるなど、実質、明文の両面での改憲姿勢を強めた。

菅退陣は、市民と誠実に向き合わない政治、国会軽視の政治、憲法や法律の解釈を政府一存で変更する政治、市民のいのち、くらし、生業より一部大企業や富裕層の儲けを優先する政治からの転換の好機である。

しかし、当面の政治的焦点があたっている自民党総裁選挙にそのような点での政治の転換を期待することはできない。安倍・菅政治を支えつづけて共同責任のある候補者、安倍・菅政治へのすり寄りを明言して自民党内の権力闘争に勝ち抜こうとする候補者ばかりだからである。

新しい政治への転換は、市民と野党の共闘を基盤においた政権交代で実現するしかない。その機会、総選挙は目前に迫っている。

菅退陣を安倍・菅政治の終わりにするため、自民党4項目改憲を断念させるため、新自由主義と決別していのちを守り、支えあう社会にふみだすため、野党連合政権の実現をめざし、地域、職場での取り組みをすぐに開始しよう。

2021年9月6日

戦争する国づくりストップ!憲法を守りいかす共同センター