【声明】人権を侵すコロナ特措法改定での罰則強化に反対する

(声明)

人権を侵すコロナ特措法改定での罰則強化に反対する

 

 政府は、1月18日から開催される通常国会に、新型コロナ対策強化の目的で「コロナ特措法(新型インフルエンザ等対策特別措置法)」と感染症法・検疫法の改定法案を提出するとし、12日にその概要を明らかにした。
 概要によれば、緊急事態宣言の発出が避けがたくなった区域で前段階の対策をとれる「予防的措置」を新設すること、感染拡大防止のための休業等の要請に応じない場合の命令及び命令に違反した場合の行政罰(過料)を規定すること、休業要請等の場合の事業者支援での国、地方自治体の努力義務、患者等への不当な差別を抑制する国、地方自治体の啓発活動をコロナ特措法改定に盛りこむとしている。
 また、感染症法・検疫法改定では、国、地方自治体間の情報連携(通報等)を規定するとともに、宿泊療養・自宅療養の協力要請規定を新設し、入院勧告、入院措置の権限の明確化と反した場合の罰則(懲役及び罰金)の規定、感染経路等の調査での虚偽答弁や調査拒否の場合の罰則規定などを新設するとしている。

 今のコロナ感染状況からしても、感染拡大防止のために人の移動を制限し、事業の自粛を求めることには合理性があり、公共の福祉のために基本的人権が一定程度制約されることには避けがたい面がある。しかし、その場合でも、個人の尊厳の尊重を基本に、憲法第22条の居住・移転・職業選択の自由や第29条の財産権などの人権制約は最小限とし、「要請と補償は一体」の立場で制度、政策が決定されるべきは当然である。
 その点で、国・地方自治体による財政面での補償を努力義務とする一方で、市民、事業者には罰則付きで命令等の遵守を強制することは著しくバランス、人権上の配慮を欠いており、政府のコロナ特措法等の改定検討が、罰則ありきで進められていると思わざるを得ない。
 刑罰等を規定することで、警察権力を背景にした感染対策が公然化し、例えば制限時間外の営業活動への警察の介入、一定時間後の外出への過剰規制など、警察国家、監視社会に一気に進む危険性をはらんでいる。
 憲法にもとづく政治、社会の実現を求める運動体として、そのような点でのコロナ特措法改定の内容に反対する。

 すでに、昨年12月2日に、立憲民主党、共産党、国民民主党、社民党の野党4党が、感染拡大時の知事権限の強化や休業要請に応じた事業者への給付金支給と国による財政措置などを明記したコロナ特措法改正法案を提出しており、それをもとにした法改正を求める。
 なお、東京都内だけでも、入院先や療養先が決まらない感染者がすでに7000人以上出ていると報じられている。この一事からも、医療体制の抜本的拡充、強化は国、地方自治体が緊急に対応すべき課題である。また、医療、介護施設等でのクラスターの多発が事態をより深刻化させていることからしても、PCR検査のあり方を早急に見直し、感染の実態を正確に把握することにも力を注ぐべきである。
 ノーベル医学生理学賞を受賞された本庶佑氏など4氏が、PCR検査の大幅な拡充と無症候感染者隔離の強化などを提言され、GOTOキャンペーン予算の振替を主張されているが、この提言等に強く賛同する。
 このような科学者の提言を真摯に受けとめた政策の実行こそが、コロナ感染対策を有効なものとし、長期的視点で経済も雇用も安定させる政策に資するものと確信する。この点でも、政府の政策の変更を強く求める。

 

2021年1月15日

戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター
(憲法共同センター)

(談話)「国家による学問の自由の侵害は許されない -違憲・違法の日本学術会議会員任命拒否の撤回を求める-」

(談話)

国家による学問の自由の侵害は許されない
- 違憲・違法の日本学術会議会員任命拒否の撤回を求める –

 

 10月1日の日本学術会議総会で、同会議が推薦した新会員の内6名が、菅首相によって任命を拒否されたことが明らかにされた。翌日、日本学術会議は、「政府からの独立を譲るべきではない」との立場から、6名の任命拒否撤回を求める要望書を菅首相に提出した。
 しかし、菅首相は「法律に基づき任命した」と強弁し、政府の担当部署も任命拒否の理由を明確にすることなく「義務的に任命しなればならないというものではない」と開き直るという許しがたい対応に終始している。

 

 任命を拒否されたのは芦名定道京都大学教授、宇野重視東京大学教授、岡田正則早稲田大学教授、小沢隆一東京慈恵会医科大学教授、加藤陽子東京大学教授、松宮孝明立命館大学教授であり、多くが安保法制・戦争法、特定秘密保護法、「共謀罪」などの違憲法制や辺野古新基地建設に反対する見解を表明してきた学者である。
 学問的見地から政府方針を批判したことが任命拒否の理由とすれば、学問の自由、思想信条の自由への正面からの挑戦であり、重大な人権侵害である。
 任命拒否の理由を政府が明らかにしないことも、学者のみならず広く市民への萎縮効果を狙うものであり、きわめて狡猾である。
 政府への批判を許さない姿勢も安倍政権から引き継ぎ、さらに強めるための菅首相による任命拒否を黙過することは、民主主義のさらなる後退となりかねない。異なる意見を排除する社会、物言えぬ社会への道に進むことを拒否し、決定の撤回を強く求める。

 

 日本学術会議は1949年1月に設置された「政府から独立して職務を行う『特別の機関』」であり、会員210名の任命は「(日本学術会議による)推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」(日本学術会議法第7条2項)とされる。この任命行為の趣旨は、憲法第6条の天皇による内閣総理大臣の任命行為と同様に裁量の余地はなく、推薦の承認が義務付けられるものである。実際、政府は従来から「形だけの推薦制であり・・・学会の方から推薦していただいたものは拒否しない」(1983年参議院文教委員会での政府答弁)などと述べていた。
 憲法に「学問の自由」(憲法第23条)が明文化されたのは、戦前の滝川事件や天皇機関説事件などの政府による学問、言論への介入、弾圧が、軍国主義と戦争への道を開いたことの反省に立つからである。その点で、学問の自由は市民的権利の根幹をなす規定でもある。日本学術会議はこの憲法規定にそって、「原子力3原則」や軍事研究への批判など、国の施策に対する意見、勧告などをおこなってきた。
 今回の任命拒否は、そのような憲法と経緯を無視して日本学術会議の独立性を否定し、政府方針への忖度、隷従を迫るものでもある。市民共通の利益を損なう暴挙にほかならず、断じて認めることはできない。

 

 菅首相は安倍政権の官房長官として、集団的自衛権行使容認の閣議決定にむけた内閣法制局長官人事への介入や、同様の法の変更は、東京高検検事長の定年延長にかかわる検察官への国家公務員法適用での解釈変更にも深くかかわり、内閣人事局を通じた官僚支配強化を主導してきた。その手法を学術分野に持ち込むための任命拒否であり、その悪影響は容易に想定される。
 また、この間の政府の対応は、首相の任命権を恣意的に解釈して行使するものであり、立法機関である国会の権能をも形骸化させかねない点でも大きな問題を含んでいる。

 

 私たちは、権力への忖度、隷従を迫る動きを断じて許さない。黒を白と言いくるめ、押し付ける社会に進ませないため、立憲主義、民主主義を守る政治実現の取り組みに全力をあげる。
 すでに行動に立ち上がっている学者、市民と手を携えて、任命拒否の経過と理由を明らかにし、憲法を踏みにじる任命拒否の撤回をめざし、立憲野党の国会での追及と連携して世論と運動を強めるものである。

 

2020年10月6日

戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター

 

(談話)「国家による学問の自由の侵害は許されない -違憲・違法の日本学術会議会員任命拒否の撤回を求める-」(PDF)

 

九条の会声明「安倍政権の終わりと改憲問題の新たな局面を迎えて」

安倍政権の終わりと改憲問題の新たな局面を迎えて

2020.09.23 九条の会

 

 7年8ヶ月に及ぶ安倍晋三内閣が総辞職し、菅義偉政権が誕生しました。安倍首相が任期を残して辞任に追い込まれた最大の要因は、九条の会も参加した「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」による3000万人署名、発議阻止の緊急署名の運動をはじめとする全国の市民の粘り強い行動が強い後押しとなり、それに励まされた立憲野党の頑張りが、安倍首相の念願である明文改憲の策動を押しとどめ、「2020年末までに」「自分の任期中に」という首相の公約を事実上挫折に追い込んだことにあります。それに加えて、安倍政権が進めてきた大企業を優遇し、いのちと暮らしをないがしろにする政治が、新型コロナの流行に直面して、対策の無力、社会の困難を露呈させたことや、モリカケ、桜を見る会の問題、検察庁法「改正」の企みなどの政治の私物化への怒りの爆発が、政権を追い詰めた要因となりました。

 

 しかし、安倍政権の追求した改憲、大企業優遇の政治は決して安倍個人の思いつきではなく、冷戦終焉以降、自衛隊をアメリカの戦争に加担させようと圧力をかけてきたアメリカや財界、右派勢力の要請に基づくものです。2015年の日米ガイドラインでは日米同盟をアジア・太平洋から世界へ、さらには宇宙にまで拡大し共同作戦体制を強化することが謳われています。安倍首相が辞任したからといってこれらの危険がなくなるわけではありません。
 誕生した菅政権は、「安倍政権の政治の継承」を掲げ「憲法改正にしっかりと取り組む」と安倍改憲の完遂を公約に掲げています。菅首相をはじめとして新閣僚21人中実に18人が日本会議国会議員懇談会等の改憲右派団体のメンバーであることはその決意の強さを裏づけています。
 さらに、菅政権は、明文改憲の前段として、9条の実質的破壊を推し進める「敵基地攻撃能力」の保持をまず強行しようとしています。安倍首相は、退陣直前の9月11日に異例の「談話」を発表して次期政権に、その実行を迫りました。それに呼応して、安倍首相の実弟である岸信夫新防衛大臣は就任直後の記者会見で、敵基地攻撃能力を含むミサイル防衛について「今年末までにあるべき方策を示し、速やかに実行に移す」と明言しました。これは、自衛隊が米軍とともに海外で戦争する軍隊になることをめざすものであり、9条を破壊する許すことのできない暴挙にほかなりません。

 

 安倍政権を終わらせたことで改憲の企てに大きな打撃を与え、改憲問題は新たな局面に入りました。むろん自民党・改憲勢力はあきらめていません。改めて改憲4項目を掲げ、改憲に拍車をかけようとしています。安倍改憲の強行を阻んだ市民の力に確信を持って、改憲発議阻止の緊急署名に、改めて取り組みましょう。敵基地攻撃力保持という9条の破壊を許さない、という声を挙げましょう。

 

安倍政権の終わりと改憲問題の新たな局面を迎えて(PDF)

(声明)菅政権発足にあたって -「安倍亜流政治」を早期に終わらせよう-

(声明)

 

菅政権発足にあたって
-「安倍亜流政治」を早期に終わらせよう-

 

 9月16日の臨時国会で、安倍政治を丸ごと引き継ぐとくり返す菅自民党総裁が内閣総理大臣に指名された。
 菅氏は、安倍政権の7年8か月を内閣官房長官として支え、集団的自衛権行使容認の閣議決定や戦争法・安保法制などの戦争する国づくりや、消費税増税と社会保障の連続改悪の社会保障の一体改革、雇用破壊の働き改革などに関与し、内閣人事局を通じた官僚支配を強めて行政情報の隠蔽、改ざん、破棄と忖度の強要で権威主義の人事政治を進めた共犯者である。モリトモ、桜を見る会疑惑や東京高検検事長の定年延長など、安倍政治のもとで進行した政治腐敗の面でも、菅氏が果たした負の役割は大きい。これらの点への反省もなく、安倍政治の継承を政権の基本路線とすることは許されることではない。

 

 安倍政権の目玉の政策とされたアベノミクスは、非正規雇用の増加などによって賃金、所得の低下と貧困化を加速させた。その一方で、異次元の金融緩和や日本銀行、年金基金資金による株の買い支えで大企業と富裕層の富の蓄積を急増させ、貧富の差を拡大した。「アベノミクスを見直すべきだ」とする回答が58.9%という共同通信の世論調査結果は、その現状への市民の批判が反映したものにほかならない。
 このような安倍政治の全面的な継承を言い募ることで自民党総裁選挙を勝ち抜いた菅氏に、コロナ危機で苦しむ市民、労働者の命とくらしを守る政治を期待することはできない。変わる政治の選択肢を国民に示すこともできない自公連立政権がいきづまっていることも明らかだ。

 

 菅新首相は、安倍政治の継承だけにとどまらず、さらなる悪政推進の立場を自民党総裁選挙の論戦で示したことも軽視できない。
 改憲について「憲法審査会での(自民党改憲4項目)の論議促進」を表明し、「政府として(改憲に)挑戦」と発言して憲法軽視の姿勢も露骨に示した。また、政治目標を「自助、共助、公助と絆」だとし、政治の役割を放棄する自己責任を市民に迫る姿勢を露骨に示した。また、沖縄・名護市辺野古での米軍基地建設についても「進めていく」と強硬姿勢を改めようともしていない。安倍首相の改憲姿勢を「引き継ぐ必要はない」が57.9%を占める国民世論(共同通信)を無視する主権者軽視の姿勢まで引き継ぐ新政権に、微塵も期待することは出来ない。

 

 コロナ危機の中で明らかになったのは、自己責任を市民に迫った政治が医療や介護、福祉、教育などの公的ケア・公共サービスを後退させ続け、社会の安定基盤や公衆衛生を脆弱なものとしていた結果、命の格差が生ずるという深刻な問題であった。
 武器による安全保障に偏重して大軍拡を進めてきた政治が財政を硬直化させ、命とくらしをまもるための予算執行を困難にしていた。
 イギリスのジョンソン首相が述べたように「社会は存在する」のであり、命とくらしを守るための政府の役割の再構築こそがいま求められている。

 

 私たちは、戦争する国づくり、命とくらし軽視の政治を続けた安倍政権の退陣を求め続けてきた。その安倍政権の政治を全面的に継承するだけでなく、悪政をさらに加速させようとしていることが明らかな菅政権の誕生を歓迎するわけにはいかない。政権トップの交代では、政治は1ミリも改善の方向に向かないことが明らかになった今、徹底した国会論戦で国民が願う政治転換の方向を議論し、「安倍亜流政治」にほかならない菅政権を早期に退陣に追い込むことが喫緊の課題である。市民と野党の共闘の前進で自公政治の転換と政権交代を実現するために、「改憲発議反対緊急署名」をはじめとした、これまでのたたかいを継続しさらに強めていくものである。

2020年9月16日
戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター

 

菅政権発足にあたって -「安倍亜流政治」を早期に終わらせよう-(PDF)

 

違憲の敵基地攻撃能力保有論議は直ちに中止を -安全保障政策に関する安倍首相談話に対する談話-

2020年9月15日
戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター

 

違憲の敵基地攻撃能力保有論議は直ちに中止を
-安全保障政策に関する安倍首相談話に対する談話-

 

 安倍首相は、9月11日に出した安全保障政策に関する談話で、「敵基地攻撃能力」の保有を視野にいれたミサイル阻止能力の整備方針を明言し、年内に方向性を固めて年末に改定を予定する防衛計画大綱と中期防衛力整備計画への反映を求めた。
 「敵基地攻撃能力」の保有論議はこれまでもくり返し行われてきたが、戦力の不保持を宣言する憲法9条との関係で、「専守防衛」の枠内の論議に留め、「(もっぱら相手国国土の壊滅的な破壊のための)攻撃能力を保有することは、直ちに自衛のための必要最小限の範囲をこえることになるため、いかなる場合も許されません」(防衛省ホームページ)としてきた。
 今回の首相談話は、これまでの日本の安全保障政策や憲法9条の政府解釈などをないがしろにするものである。憲法を軽視し、積み上げられてきた憲法解釈を捻じ曲げる解釈改憲を繰り返してきた安倍首相が、辞意を表明した後に憲法破壊の行為を繰り返すことは到底許されることではない。

 

 敵基地攻撃は、国際法上も先制攻撃とみなされるものであり、国連憲章にも反している。仮に実施すれば攻撃を受けた相手国は、当然の権利として反撃をしてくることが容易に想定され、戦争状態に陥ることになる。
 また、先制攻撃可能な武器の保有そのものが、日本の安全保障政策の180度転換であり、近隣諸国をいたずらに刺激し、際限のない軍拡競争を引き起こすものである。既に、現行の防衛計画の大綱や中期防衛計画で、ヘリコプター搭載駆逐艦の空母への改造や、その空母に搭載可能な戦闘爆撃機・F35Bの大量購入、長距離ミサイル購入などの大軍拡が進められ、2020年度予算では5兆3000億円もの軍事費が計上されている。敵基地攻撃のための武器等の保有はそれらを上回る際限のない軍拡に道を開くものでもある。

 

 辞意を表明した首相が談話で、後継内閣の安保政策を縛ることも憲法に反する行為にほかならない。
 私たちは安倍内閣の8年弱、執拗に狙われた憲法9条改憲を市民の運動と世論で押し返してきた。この到達点に確信を持ち、安倍後継内閣のもとでも、戦争する国づくりと9条改憲を阻止するたたかいをさらに強める。同時に、違憲の敵基地攻撃能力の保有に強く反対し、大軍拡への道に進ませないためのたたかいを強めるものである。

以 上

 

違憲の敵基地攻撃能力保有論議は直ちに中止を -安全保障政策に関する安倍首相談話に対する談話-(PDF)