国民を監視し、運動弾圧や私権制限をもたらす
「土地利用規制法案」の廃案を求めます(アピール)
2021年4月30日
菅内閣は3月26日、「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案」(略称「土地利用規制法案」)を閣議決定・提出し、今国会での成立を狙っています。
① 土地利用規制法案は、米軍基地や自衛隊基地、原発などの「重要施設」の周囲約 1 キロと、国境にある離島を「注視区域」に首相が指定し、 そのうちさらに、司令部を置く基地など特に重要とみなすものを「特別注視区域」に指定するとしています。 政府は、「注視区域」内にある土地・建物の所有者や賃借人などの情報を集め、必要なら利用状況に関する報告を求めることができるとしています。「特別注視区域」については、一定以上の面積の土地売買は、氏名、国籍などの事前の届け出を義務付けるとしています。無届けや虚偽の届け出をした場合は、 6 月以下の懲役または 100 万円以下の罰金を科すことができます。
また、「重要施設」などの「機能を阻害する行為」や「機能を阻害する明らかなおそれ」がある場合、内閣総理大臣が利用中止の勧告・命令をおこなうことができるとし、命令に応じない場合、 2 年以下の懲役または 200 万円以下の罰金を科すことができます。
②問題は 、調査内容が際限なく広がる危険があることです。法案では、政府が収集できる情報について「その他政令で定めるもの」「内閣府令で定める事項」としており、国会のチェックは及ばず、政府の判断で、思想信条や所属団体、家族・友人関係などが調べられる危険があります。 過去に、 自衛隊のイラク派兵に反対する国民を自衛隊情報保全隊が監視していた事実もあり、決して杞憂ではありません。
また、「機能を阻害する行為」の内容があいまいなことも問題です。政府は、電波妨害、盗聴、侵入などを想定していると言いますが、具体的内容は法案成立後に政府 の裁量で決められる 「基本方針」で定めることになっています。
以上を踏まえると、 すべての国民を対象にした 個人情報の収集 のみならず 、 基地などの近隣住民の監視、基地に対する抗議行動の規制が政府の恣意的判断で実行されることになります。 例えば 、低空飛行、爆音被害、部品落下、 有機フッ素化合物の混じる泡消火剤流出などの基地被害を押し付けられている周辺住民や基地の監視・抗議にとりくむ運動の弾圧に使われることにもなりえます 。
沖縄では、多くの住宅などが基地から1キロ以内となります。これらの基地は、住民の土地を強奪して造られたもので、基地の重圧に苦しむ県民にさらなる負担を押し付けることは到底認められません 。
③今回の法案は、「安全保障に寄与すること」を掲げ、軍事的安全保障の観点から国民の私権を制限するものとなっていますが、立法事実はありません。 防衛省が2013 年以降に2 回も実施した基地周辺の土地所有状況の調査結果でも運用に支障をきたす事例は確認されていません。
戦前・戦中には、軍事施設周辺などでの立ち入りや撮影等の行為を全面禁止・処罰する「要塞地帯法」により国民が弾圧されました。この法律は日本国憲法のもとでは廃止され、軍事のための土地収用は除外されています。 今回の法案はまさに戦前回帰ともいうべきもので、 「戦争できる国づくり」のための特定秘密保護法、共謀罪法などとともに、安保法制=戦争法と一体のものであり、 菅政権が今国会で強行をはかるデジタル関連法案、少年法と入管法改悪などと軌を一にするものです。
私たちは、憲法の平和主義に反する 「土地利用規制法案 」 の速やかな廃案を求めます。
以上
<呼びかけ団体>
「軍事費を削って暮らしと福祉・教育の充実を 」 国民大運動実行委員会
憲法改悪阻止各界連絡会議 戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター
自由法曹団 日本平和委員会日本国民救援会 平和・民主・革新の日本をめざす全国の会(全国革新懇) 安保破棄中央実行委員会