立憲野党・政党インタビュー(立憲民主党・枝野幸男代表、日本共産党・志位和夫委員長、社会民主党・大椿ゆうこ副党首)

市民連合は、2021衆議院選挙に向けて、立憲野党・政党インタビューを企画・連載しましたので、紹介します。

第1回 ■立憲民主党・枝野幸男代表
https://shiminrengo.com/archives/4397

第2回 ■日本共産党・志位和夫委員長
https://shiminrengo.com/archives/4405

第3回 ■社会民主党・大椿ゆうこ副党首
https://shiminrengo.com/archives/4424

一日もはやく「戦争法(安保関連法)」の廃止を – 麻生副総理の憲法を逸脱する「台湾有事『日米で防衛』発言」に抗議する – (談話)

一日もはやく「戦争法(安保関連法)」の廃止を
– 麻生副総理の憲法を逸脱する「台湾有事『日米で防衛』発言」に抗議する –

 7月5日の講演で麻生副総理兼財務大臣は、中国が台湾に侵攻した場合に日本政府は「安全保障関連法の『存立危機事態』と認定して集団的自衛権を行使する」と発言した。

 日本が攻撃されていなくても、米国などと一体となって他国と戦争する集団的自衛権が容易に行使される危険性を強く示唆し、自衛隊が国外で戦争する現実的な可能性を改めて明らかにした。「戦争法(安保関連法)」が、明白に憲法違反であることを再確認させる発言でもある。

 「戦争法」の一日も早い廃止を強く主張する。そのためにも、きたる総選挙に向けて同法をはじめとする違憲の法律の廃止も共通政策にした政権の実現にむけた野党間の協議をおこない、合意の速やかな形成を強く求める。

 台湾有事をめぐっては、本年4月16日の日米首脳会談の共同声明に「台湾海峡の平和と安定」が明記され、「戦争法(安保関連法)」が施行されたもとでの日米の軍事同盟強化の課題に位置付けられた。

 麻生発言はさらにふみこみ、台湾有事は「密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされるなどの事態」である「存立危機事態」だと位置づけて集団的自衛権行使の対象とした点で、看過できない問題発言である。

 台湾をめぐっては、5月に菅首相が国会討論で「オーストラリア、ニュージーランド、台湾の3国」と発言し、6月末には中山防衛副大臣が講演で台湾を「民主国家」と発言して、中国の激しい反発を招いた。

 日本は、1972年の日中共同声明で「台湾が中華人民共和国領土の不可分の一部」であることに合意しており、中国と台湾の問題は「基本的には中国の国内問題」だとする統一見解も示している。このことからしても、台湾有事を集団的自衛権行使の対象としたこと自体が、戦後の東北アジアの政治的安定を損なうものであり、自らが好んで事をおこす姿勢だと非難されても致し方のないものである。

 これらの経緯を承知の上で、「台湾有事」への日米安保条約の適用や、集団的自衛権行使の対象とすることは、極めて危険で前のめりのものであり、憲法からも大きく逸脱している。

 菅政権発足以降も、敵基地攻撃が可能な武器保有のための軍事費予算の強行や、土地利用規制法案、デジタル庁関連法案など政府裁量で基本的人権を抑圧する悪法を相次いで強行するなど、「壊憲」の動きが急加速している。台湾有事への日本の関与を既定のものにすることは、その動きとも同根である。

 この点を改めて注視し、戦争する国に一直線に進む菅自公政権を次の総選挙で打倒して、憲法がいきる平和な日本への転換を実現することは、いのち、くらし、平和を守るためにも喫緊の課題である。

 憲法に沿った政治を実現するための行動、全国各地での奮闘を心からよびかける。

2021年7月9日

戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター

デジタル監視法案に反対する法律家ネットワーク「デジタル監視法案の衆議院本会議採決に強く抗議するとともに、参議院での慎重審議と抜本的修正を求める法律家・ 法律家団体の緊急声明」2021年4月6日

デジタル監視法案の衆議院本会議採決に強く抗議するとともに、
参議院での慎重審議と抜本的修正を求める法律家・法律家団体の緊急声明

 

2021年4月6日
デジタル監視法案に反対する法律家ネットワーク

 

 本日、衆議院本会議において、デジタル改革関連5法案(デジタル監視法案)が、自民党、公明党などの賛成多数で採決された。私たちは、個人情報の保護、プライバシー権の保障を徹底し、国家による市民監視を許さない立場から、デジタル監視法案に断固として反対するものである。今回の採決は、市民の反対や慎重審議を求める多くの声を完全に無視する暴挙であり、強く抗議する。

 

1 拙速な審議と採決に強く抗議する
 デジタル関連5法案は63本の束ね法案からなるにもかかわらず、審議時間はわずか27時間であり、圧倒的に審議が足りていない。法案提出後に資料の誤りが多数発覚し、国会への報告も遅れるなど手続き的にも不備があった。憲法13条(個人の尊重、プライバシーの権利)、同92条、同94条(地方自治)、国家行政組織上の問題など、基本的人権と民主主義の基盤に関わる重要な問題が山積みであり、それが28項目にも及ぶ附帯決議に象徴されている。  
 政府は、月内の成立を目指すとされているが言語道断である。参議院における審議は、衆議院で審議が尽くされていないデジタル監視法案の数多の問題点について、国民の疑問に答えるためにも、ひとつひとつ十分な審議を慎重に尽くし、特に以下に述べる重大事項について抜本的な修正を施すことを強く求める。与党らがこれらの抜本的修正に応じない限り法案は、廃案にすべきである。

 

2 個人情報の保護・プライバシー権(憲法13条)と知る権利(憲法21条)の保障が不可欠である
 法案は、個人情報の利活用を優先し、個人情報の保護を後退させるものである。
 法案には、自己情報コントロール権を明記するともに、EU一般データ保護規則(GDPR)に準拠して個人情報の取得、保有、利用、提供のすべてに情報の主体である個人の同意原則を徹底保障することが必要である。目的外利用、第三者提供について同意を不要とする例外規定(整備法による改正後の個人情報保護法69条2項2号、3号及び4号)の見直しは必須である。インターネット、監視カメラ、顔認証システム、GPSシステム等により大量の個人情報が集積される現状において、公権力が個人情報を収集、検索、利用するには、その範囲を必要最小限にするとともに、個別に法的権限を明記し要件を厳格に定める法整備が不可欠である。
 また、自己のいかなる情報が公権力により収集され利用されているのかについて市民の知る権利が保障されなければならない。行政機関個人情報保護法10条2項1号2号の改正をはじめとして情報公開制度の実効性を高めるとともに、公文書管理のさらなる徹底を図ることが、デジタル化推進の前提である。森友加計学園や南スーダンPKO日報問題等々の教訓から、公文書管理と情報公開制度の充実が、デジタル化推進の本来の目的の一つであったにも関わらず、法案はこの点について何も触れていない。
 さらに、法案は、個人情報保護委員会に監督を一元的に委ねているが、政府から独立した機関ではなく、個人情報については特定個人情報に関して認められている省庁への命令権限が付与されておらず、組織の規模や人員の確保、予算措置等は不明であって、監督・監視機関としては決定的に不十分である。特に公安警察、公安調査庁、内閣情報調査室の活動に対する監視は、秘密保護法が制定された後も、現行制度では機能していない問題がある。その点も含めて政府から独立した強い権限を持つ個人情報保護のための監督・監視機関の設置が必須といえる。

 

3 国家・警察による市民監視を厳格に禁止し又は規制する立法措置が不可欠であること
 デジタル監視法案のもとでは、各省庁と地方自治体の情報システムが、すべて共通仕様化され、デジタル庁に一元管理される。さらに、マイナンバーによって、健康情報、税金情報、金融情報、運転免許情報、前科前歴情報などが今後紐づけされて一覧性の高い形で利用が可能となる。これは、市民のセンシティブ情報を含むあらゆる情報を政府が「合法的に」一望監視できる国家、すなわち「監視国家」の体制整備を意味する。内閣総理大臣を長とするデジタル庁は、内閣情報調査室と密接な関係を持ち、デジタル庁が集約した情報は、官邸・内閣情報調査室を介して警察庁・各都道府県警察と共有されることが強く疑われる。
 これらの監視国家化を禁止又は厳格に規制するための法的措置が不可欠である。

 

4 デジタル庁は、内閣総理大臣に強大な権限を与え統治のシステムを歪め、IT等企業と行政の癒着、利権の温床となるおそれがあること
 内閣総理大臣を長とする強力な総合調整機能(勧告権等)を有するデジタル庁は、内閣に設置され、ガバメントクラウドを統括管理し、予算配分を担うことになり、他方で、各省庁、地方自治体、教育機関、医療機関等は、デジタル庁の勧告に対して尊重する義務を負う。このような異質な統治システムがなぜ必要なのかについて、議論が尽くされていない。
 また、デジタル庁の職員は民間企業から多く採用されており、行政と企業の癒着によって行政が歪められるおそれがある。

 

5 地方自治の侵害
 デジタル監視法案は、これまでの分権的な個人情報保護システムの在り方を根本から転換し、国による統一的な規制を行うとするものである。このような制度は、各公共団体において、住民との合意のもとで構築してきた独自の個人情報保護の在り方を破壊し、公共団体による先進的な個人情報保護制度の構築を後退させるものになりかねない。自治体において収集した個人情報をどのように管理するかは、自治事務の一環であり、国がこれを一方的に支配・統合することは、地方自治の本旨(憲法92条)、条例制定権(憲法94条)に違反する。

 

6 結語
 デジタル監視法案は、上記の点以外にも、そもそも誰のためのデジタル化推進かという立法事実の議論をはじめ、転職時における使用者間での労働者の特定個人情報の提供を可能とする、国家資格をマイナンバーに紐づけて管理するなど、極めて問題が多い法案である。慎重にも慎重な審議が必要である。特に、個人情報保護の徹底とプライバシー権侵害の危険の払しょく及び警察権力の規制をはじめ監視国家化防止策が徹底されない限り、デジタル監視法案は、廃案にすべきである。
                                        

 

以上

 

声明が自由法曹団HPにアップされました

https://www.jlaf.jp/04seimei/2021/0415_883.html

 

声明のPDFデータはこちら

 

記者会見の動画です。
デジタル関連法案(デジタル監視法)記者会見
https://youtu.be/DRVNAjGE9yA

 

4月6日、衆議院本会議で、デジタル関連5法案を一部修正の上で採決しました。私たちは、この法案をデジタル監視法案とを呼び、個人情報の保護・プライバシー権の保障を徹底し、国家による市民監視を許さない立場から強く反対しています。今回の委員会採決は、市民の反対や慎重審議を求める多くの声を完全に無視する暴挙といえます。政府は、月内の成立を目指すとしています。このような情勢に鑑み、緊急の記者会見を行いました。

 

日 時:4月6日(火曜)
主 催:デジタル監視法案に反対する法律家ネットワーク
場 所:衆議院議員第一議員会館 第6会議室 

 

報 告: 三宅弘弁護士(元総務省行政機関等個人情報保護法制研究会委員)
海渡雄一弁護士(共謀罪対策弁護団共同代表)
大江京子弁護士

 

デジタル監視法案に反対する法律家ネットワーク
共謀罪対策弁護団 共同代表 海渡雄一/秘密保護法対策弁護団 共同代表 海渡雄一・中谷雄二・南 典男/社会文化法律センター 共同代表理事 宮里邦雄/自由法曹団 団長 吉田健一/青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 上野 格/日本国際法律家協会 会長 大熊政一/日本反核法律家協会 会長 大久保賢一/日本民主法律家協会 理事長 新倉 修/三宅 弘 元総務省行政機関等個人情報保護法制研究会委員 弁護士/平岡秀夫 元法務大臣・元内閣官房国家戦略室室長 弁護士/青井未帆 学習院大学教授/池本誠司 元消費者庁参与 弁護士/右崎正博 獨協大学名誉教授/白藤博行 専修大学教授/晴山一穂 専修大学名誉教授

 

日本学術会議幹事会声明「日本学術会議会員任命問題の解決を求めます」

日本学術会議幹事会声明

「日本学術会議会員任命問題の解決を求めます」

 

 日本学術会議(以下「本会議」)第25期の開始にあたり、第180回総会(第24期、令和2年7月9日)が推薦を決定した会員候補105名中6名について菅義偉内閣総理大臣が任命を見送ってからほぼ4カ月が経過しました。その間、本会議は第181回総会(第25期、令和2年10月1-2日)において2点にわたる要望(別添)を決議し、会長から直接内閣総理大臣に手交しました。また、井上信治内閣府特命担当大臣(科学技術政策)と本会議役員等との協議の場でもこの問題について提起してまいりました。しかしながら、現在にいたるまで6名の任命は行われておりません。そのため、日本学術会議法第七条に定められた会員210名をもって職務にあたるべきところが現員は204名にとどまり、本会議の運営や職務の遂行に支障をきたす事態となっています。とりわけ6名が所属予定であった第一部(人文・社会科学)では1割近い数の会員が任命されておらず、部会・委員会・分科会などの会務の遂行に困難が生じています。私たちは、前例のないこの事態に直面して対応を迫られてきました。

 今回の任命見送りについて、たびたび求めてきたにもかかわらず任命権者から本会議への正式の回答や説明は一切行われておりません。このまま定数210名にたいし6名の欠員という法の定めを満たさぬ状態が長く継続することは、本会議の独立性を侵す可能性があるものといわなければなりません。その是正をはかることができるのは、任命権者たる内閣総理大臣をおいてありません。
 本年4月には第25期二度目となる第182回総会が開かれます。この総会は、政府とも協議を重ねながら検討を進めてきた本会議のより良いあり方について意思決定すべききわめて重要な役割を担った総会であり、これが法の定めを満たさぬままに開催されることは避けられねばなりません。本会議が適正な選考手続きを経て推薦したもののいまだ任命されていない6名を、すみやかに任命されることを強く求めます。

 

令和3年1月28日

 

日本学術会議幹事会

会 長 梶田 隆章

副会長 望月 眞弓

副会長 菱田 公一

副会長 髙村ゆかり

第一部部長 橋本 伸也

第一部副部長 溝端佐登史

第一部幹事 小林 傳司

第一部幹事 日比谷潤子

第二部部長 武田 洋幸

第二部副部長 丹下 健

第二部幹事 尾崎 紀夫

第二部幹事 神田 玲子

第三部部長 吉村 忍

第三部副部長 米田 雅子

第三部幹事 沖 大幹

第三部幹事 北川 尚美

 

 

【別添】

第25期新規会員任命に関する要望書

 

令和2年10月2日

内閣総理大臣 菅 義偉 殿

日本学術会議第181回総会

 

第25期新規会員任命に関して、次の2点を要望する。

 

1.2020年9月30日付で山極壽一前会長がお願いしたとおり、推薦した会員候補者が任命されない理由を説明いただきたい。

 

2.2020年8月31日付で推薦した会員候補者のうち、任命されていない方について、速やかに任命していただきたい。

 

日本学術会議
http://www.scj.go.jp/

第307回幹事会後の記者会見資料です。(令和3年1月28日)
>日本学術会議幹事会声明「日本学術会議会員任命問題の解決を求めます」(PDF形
式)
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kanji/pdf25/siryo307-ninmei.pdf
>学術フォーラム「危機の時代におけるアカデミーと未来」(PDF形式)
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kanji/pdf25/siryo307-s-0227.pdf
>(参考)学協会声明一覧(PDF形式)
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kanji/pdf25/siryo307-gakukyokai.pdf

 

「私たちは、自民党4項目改憲を目的にした憲法審査会の開催と公選法並びの改憲手 続法改正案の採決に反対します」総がかり行動実行委員会・法律家6団体連絡会文書

2021年1月18日

 

戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

改憲問題対策法律家6団体連絡会

 

私たちは、自民党4項目改憲を目的にした憲法審査会の開催と

公選法並びの改憲手続法改正案の採決に反対します

 

 憲法9条などの改憲を目指し、戦争法など数々の違憲立法を強行採決により成立させてきた安倍前首相は、辞任表明後もなお「改憲手続法を今国会で成立させる」と表明し、後継の菅政権も、「安倍政治の継承」を謳い、憲法改正に取り組むことを表明しました。これを受けて、衛藤征士郎自民党憲法改正推進本部長は、9条への自衛隊明記や緊急事態条項創設など自民党4項目改憲案をもとに改憲原案に仕上げるとして、憲法改正原案起草委員会を立ち上げて活動を開始しました。そのような中で、昨年11月26日に開催された衆議院憲法審査会では、与党ら提出のいわゆる公選法並びの7項目の改憲手続法改正案(以下「7項目改正法案」あるいは単に「改正法案」といいます。)の審議が開始され、採否は持ち越されました。

 しかし、新型コロナ感染症の急激な感染拡大の中で、今、国会が全力を集中すべきは、医療崩壊を食い止め、市民の命を守り、生活の糧を得ることが困難となった多くの市民に対する補償や救済策を講じ、PCR検査の拡大など新型コロナ感染症の感染拡大を止める有効な対策を実行することであり、世論の大多数が望んでいない改憲の手続きについての議論ではありません。  

 総がかり行動実行委員会と改憲問題対策法律家6団体連絡会は、以上の理由から、通常国会において、自民党4項目改憲を目的にした憲法審査会を開催すること自体に反対であり、仮に、開催するとしても7項目改正案の抜本的な見直しと改憲手続法の本質的な欠陥の是正を抜きに採決することには、以下に述べる理由により、強く反対します。

 

第1 憲法改正の投票を通常の選挙と同列に論じること自体誤りであること  

 1 7項目改正法案は、2016年に改正された公職選挙法(名簿の閲覧、在外名簿の登録、共通投票所、期日前投票、洋上投票、繰り延べ投票、投票所への同伴)の7項目にそろえて(並べて)改正する法案です。与党議員らは、「投票環境を向上させる」ものであり野党にも異論はないはず、提出からすでに7国会を経ている以上、直ちに成立させるべきとしています。

 2 しかし、7項目改正法案の審議は、昨年11月26日の憲法審査会で始まったばかりであり、中身の検討は全くなされていません。法案提出者は、投票環境を改善するもので異論はないはずだとしていますが、たとえば期日前投票時間の2時間の短縮が可  能となっていたり、繰り延べ投票期日の告示期限が5日前から2日前までに短縮されているなど、投票環境を後退させるものも含まれています。通常の選挙では仮に許さ  れるとしても、憲法96条の憲法改正国民投票において、国民の投票環境を後退させることは許されません。国の基本である憲法を改正するか否かの国民投票の在り方がどうあるべきかは、それ自体、憲法審査会で慎重かつ十分な議論が必要です。

 

第2 7項目改正法案は、改憲手続法の根本的な問題が未解決の欠陥法案であること  

 改憲手続法については、2007年5月の成立時において参議院で18項目にわたる附帯決議がなされ、2014年6月の一部改正の際にも衆議院憲法審査会で7項目、参議院憲法審査会で20項目もの附帯決議がなされており、日本弁護士連合会その他学者などからも欠陥の見直しを強く求められています。にも関わらず、これらの本質的な問題の解決が、13年以上も放置され続けています。とりわけ、(ⅰ)ラジオ・テレビ、インターネットの有料広告規制の問題や、ビッグデータの利用の規制の問題は、改憲手続法改正の議論において、避けては通れない重大な問題です。また、(ⅱ)運動の主体の問題もきわめて重要です。現在は、公務員・教育者に対する規制を除き(それ自体見直しの議論が必要です。)運動主体に制限はありません。しかし、企業(外国企業を含む)や外国政府などが、費用の規制もなく完全に自由に国民投票運動ができるとする法制は、抜本的な見直しが不可欠です。   

 7項目改正法案は、以上述べたような-「憲法改正をカネで買う」危険についてなどの問題が、全く考慮されていない欠陥改正法案です。これらの本質的な議論と制度の見直しを抜きに、欠陥改正法案を急ぎ成立させる必要は全くありません。 

 

第3 7項目改正法案は、自民党の掲げる4項目改憲への道を開く道具であること  

 もっとも、与党や維新らの改憲派が7項目改正法案の成立を急ぐ理由はあります。それは、自民党が現在準備中の4項目改憲案を憲法審査会に提示するために、7項目改正法案を成立させる必要があるからです。7項目の改正案が成立すれば、次は憲法改正原案の提示に進む目論見であることは明らかです。    

 そもそも、7項目改正法案は、安倍前首相の掲げた改憲を強行するための「道具」として生み出されたものです。2017年5月に、安倍首相(当時)が「2020年までに改憲を成し遂げる」と宣言し、2018年3月に自民党4項目改憲案の素案を取りまとめ、同年6月に、急遽間に合わせるように提出されたのが、この改憲手続法の7項目改正案です。自民党の4項目改憲案の狙いは憲法9条の改憲にあります。戦力の不保持、交戦権の否認を定めた9条2項を空文化し、「必要な自衛の措置」の名目で、無制限の集団的自衛権の行使を憲法上可能にし、自衛隊を通常の「軍隊」・「国防軍」にしようとするものに他ならず、「戦争をしない国」という我が国のあり方を根底から変える危険な改憲案であって、絶対に許してはなりません。欠陥改正法案法を成立させることは、この自民党改憲案が憲法審査会に提示され改憲発議への道を開くことに直結します。 

 

第4 市民は、憲法改正議論など望んでいないこと  

 市民が、憲法改正を必要とは考えていないことは、一昨年からのいずれの各種世論調査からも明らかです。新型コロナ感染症の拡大で苦しむ多くの人々の命も健康も生活も蔑ろにして、国会も開かずに自助を迫るだけの無能無策の限りを尽くす政府に対して、市民は心底怒りを覚えています。

 憲法改正の議論は、市民のなかから憲法を改正すべしという世論が大きく高まり、コンセンサスが形成される中で初めて可能となるのであり、市民の意思を無視して憲法尊重擁護義務(憲法99条)を負う国会議員や首相が主導することは許されません。そして、今、憲法改正論議を進めることなど市民が全く望んでいないことは明らかです。政府と国会が、何をおいても全力で取り組むべきことは、新型コロナ対策であり、市民の命と生活を守る施策であり、安倍前首相の桜を見る会関連の犯罪嫌疑などで地に堕ちた政治 への信頼を取り戻し、立憲主義と民主主義の本道に立ち返るための努力です。

 

以上 

 

私たちは、自民党4項目改憲を目的にした憲法審査会の開催と公選法並びの改憲手続法改正案の採決に反対します(PDF)

 

http://sogakari.com/?p=5102